解散命令請求の要件「民法の不法行為も」 岸田文雄首相が法解釈変更 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への対応をめぐり、岸田文雄首相は19日の参院予算委員会で、宗教法人の解散命令を裁判所に請求する要件に「民法の不法行為も入りうる」と述べた。18日の衆院予算委では、民法の不法行為は入らないとしていたが、法解釈を変更した。

(10月18日朝日新聞デジタルから一部引用)

 

今回問題となっている宗教法人法で規定されている宗教法人の解散請求についての条項は次のとおりとなります。

 

宗教法人法

(解散命令)

第81条1項 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。

一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。

 第二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたこと又は一年以上にわたつてその目的のための行為をしないこと。

 

この点に関する,オウム真理教の解散命令事件において東京高裁(平成7年12月19日決定)は「「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(一号)、「二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(二号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法二条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。」と判示しています。

判旨では「刑法等」とあり,条文も「法令」とされていることからすると,文理解釈としては刑法その他の刑罰法規に限るものと解釈する必要はなさそうです。

もっとも,民事法規は,それに違反したとしても損害の填補などの当事者同士での解決が図られればよいものであり,強いサンクションを与えるよなものではないともいえますが,違法に他者の法益を侵害する「不法行為」(民法709条以下)については,これに抵触する行為があれば,その程度や態様,組織性などを考慮して,法令違反にあたるものと評価することも可能であると考えるのが法の趣旨にも沿った解釈ではないかと思います。

宗教法人の解散は,宗教法人としての保護(免税など)を与えるのにふさわしくない場合に解散をさせるというものですから,程度や態様によっては,その趣旨に則って解散を命じるべき場合も十分に考えられるからです。