判例時報2527号で紹介された裁判例です(東京地裁令和3年6月24日判決)。

 

 

本件は,被相続人(亡父)名義の土地の上に,亡父と長男と共有の建物が建てられ(長男との関係では期間を定めない使用貸借契約),その後,亡父が死亡し,遺言(預金を長男と長女に相続させ,その他の遺産は二男に相続させるという内容)により土地の所有権を取得した二男が,建物所有者(共有者)である長男に対して,使用貸借契約の終了を主張して土地の明け渡しを求めたというものです。

 

 

もともと亡父と長男が建物を建てたのは同居を前提としていたたためですが,その後,長男が同居を嫌がったり,妻の氏を名乗る婚姻をしたことなどから,亡父としては,二男の方に跡取りとしての心を寄せるようになり,前記のような遺言となったようで,遺言には,建物については字何んに売却してほしいという付言事項も記載されていました。

 

 

本件は期間の定めのない建物の所有を目的とした土地の使用貸借であり,期間の定めの無い使用貸借は使用収益の目的を達したときに終了するとされていますが(本件は改正前民法適用事案のため改正前民法597条2項但書),建築された時期やその構造を考えると,土地の使用収益の目的を達したとはいえないが,長男が負担している建物のローンの残額を支払うのと引き換えであれば,土地の使用収益に足りる機関の経過による使用貸借の終了を認める(引換給付)と判断したのが本判決です。

もともと長男との同居を前提として使用貸借契約が締結されたという経緯,同居は実現せず長男が妻の氏を名乗る婚姻をしたことなどの事情から長男との同居や後を継ぐといった前提を満たさなくなった場合には,建物の存続を基準とすることなく相当な期間経過後に契約は終了することが予定されていたものというべきであるとし(但し,それでも前記の建物建築時期などからすると未だ使用収益をするのに相当な期間が経過したとまではいえない),長男が建物の残ローンを支払うのと引き換えであれば,使用収益をするのに相当の期間が経過したとして契約が終了すると考えるべきであるとしています。

 

 

 

親族間の土地使用貸借において当事者間の信頼関係破壊を理由として解約が認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

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