判例時報2522号などで紹介された裁判例です(大阪地裁令和3年5月20日判決)。

 

 

本件は,墓地の経営許可を申請したお寺に対し市が許可を出したのに対し,付近の住民がその取消しを求めたというものです。

 

 

裁判所は,付近住民については行政事件訴訟法9条1項に定められている処分の取消しを求める「法律上の利益」がないとして訴えを却下しています。

なお,処分を受けた当事者ではない第三者について法律上の利益が認められるかどうかについては同条2項が判断基準を定めています。

 

行政事件訴訟法

(原告適格)
第9条
 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。

 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

 

 

判決では,墓埋法10条1項は,墓地等を経営しようとする者は,都道府県知事等の許可を受けなければならない旨規定するが,その許可の要件については特に規定していない。これは,墓地等の経営が,高度の公益性を有するとともに,国民の風俗習慣,宗教活動,各地方の地理的条件等に依存する面を有し,一律的な基準による規制になじみ難いことに鑑み,墓地等の経営に関する許否の判断を都道府県知事等の広範な裁量に委ねる趣旨に出たものであって,墓埋法は,墓地等の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障なく行われることを目的とする法の趣旨に従い,都道府県知事等が,公益的見地から,墓地等の経営の許可に関する許否の判断を行うことを予定しているものと解される。そうすると,墓埋法10条1項自体が,当該墓地等の周辺に居住する者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い(最高裁平成12年判決参照)とし,

細則が,納骨堂の周囲に塀を設け,堅固な建物として防火設備を設けるこを,火葬場の周囲に塀を設け,場内には火葬室及び火炉を備え,適切な防臭装置を設けること,公衆衛生その他公共の福祉の見地から大阪市長が必要と認める設備を設けることを,それぞれ掲げている基準を満たさなければならないとしている点について,納骨堂周辺に居住又は勤務する者の生命,身体の安全に関する利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできず,納骨堂周辺に居住又は勤務する者の生命,身体の安全に関する利益は,法律上保護された利益に当たるということはできないと判断しています。

また,納骨堂納骨堂周辺に不動産を所有する者の財産的利益(火災による所有権の侵害を免れる利益,当該不動産価格の下落を受けない利益について(近くに墓地が建てられることで不動産価値が下落するという不利益を主張したいという人は多いのではないかと思います),墓埋法及びこれと目的を共通にする本件細則の趣旨及び目的並びに本件各処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮しても,墓埋法10条1項又は2項が,納骨堂周辺に不動産を所有する者が火災による所有権の侵害を免れる利益,当該不動産価格の下落を受けない利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできないことから,納骨堂周辺に不動産を所有する者の財産的利益(火災による所有権の侵害を免れる利益,当該不動産価格の下落を受けない利益)は,法律上保護された利益に当たるということはできないとしています。

 

 

 

一般廃棄物収集運搬等の許可または更新処分について既存業者の原告適格の有無 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)