判例タイムズ1491号で紹介された事例です(大阪地裁令和3年11月22日決定)。
コロナ禍のもと,持続化給付金をはじめとしてさまざまな給付金,また飲食店に対する時短協力金といった支給が行われていますが,本件は,飲食店が大阪府に対し時短協力金を申請したところ,府がなかなか協力金を支給しないので,行政事件訴訟法37条の5第1項に基づいて,支給するように仮に義務付けることを求めたという訴訟です。
行政事件訴訟法
第37条の5第1項 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
裁判所は,義務付けを求めることのできる「処分」とは,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政事件訴訟法3条1項,2項,6項)であり,これは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうとする判例の立場を示したうえで,本件協力金の支給に係る決定が「処分」に該当するか否か,すなわち当該決定の処分性の有無について検討し,本件協力金は,大阪府内に店舗を有して飲食店等を営業する事業者が知事の要請に応じたことに対して,法律や条例ではなく本件支給規則を直接の根拠として,申請に基づき支給されるものであるから,協力金の支給は,知事が,その優越的地位に基づき公権力を発動して私人の権利自由を制限し又はこれに義務を課するものではなく,資金の給付を求める私人の申込みに対する承諾という性質を有する非権力的な給付行政に属するものであること,そして,非権力的な給付行政においては,その給付に係る決定に処分性は認められないことが原則となるが,法律上,所定の要件を充足したときに支給を受けることを公法上の権利として認め,その可否の判断を行政処分という形式で行うということが定められていると解される場合には,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものとして処分性が肯定されるものと解されると判示しました。
そして,協力金の支給の法律上の根拠の有無について,新型インフルエンザ等対策特別措置法にはどのような事業者にどのような措置を講ずるべきかといった措置の具体的な内容についての定めはなく,また,当該措置として金銭を支給する場合の手続規定やそのような規定を定めることを地方公共団体に委ねる趣旨の定めもないことから,事業者が所定の要件を充足したときに支給を受けることが公法上の権利として法律上認められていることに基づき,その委任を受けて支給要件等を具体化したものであるとは解されず,また,本件支給規則には,支給の申請に対して支給がされなかった場合の不服申立てに関する定めもないことから,本件支給規則において,本件支給規則に基づく協力金が申請により審査の上で決定により支給されると規定されているのは(本件支給規則5条,6条1項),支給の可否の判断を行政処分という形式で行うことを定めたものではなく,資金の給付を求める私人の申込みに対する承諾という性質を有する非権力的な給付行政の範囲内で,予算の執行の適正化を図るために,その事務執行上の基本的事項である支給のための手続等を規定するにすぎないものと解され,結結論として,協力金の支給について,法律上,所定の要件を充足したときに支給を受けることを公法上の権利として認め,その可否の判断を行政処分という形式で行うということが定められていると解することはできないとしました。
要するに,協力金の支給については,法律や条令上明確に要件が定められているものではないので,法律(条令)に基づく行政処分とはいえず,行政訴訟のうちの抗告訴訟(仮の義務付け訴訟を含む)では争えないということです。
審査遅れなどにより支給が遅滞しているということは社会問題としても取り上げれ,苦境に追い込まれた飲食店ににとっては本当にひどい話だなというところであり,気持ちとしてはとても良く分かるところです。
本件決定では,協力金の支給の法的性質に従って民事訴訟あるいは公法上の法律関係に関する実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条訴訟)によって協力金の給付につき争うことが否定されるわけではないから,救済に欠けることにもならないとしています。