判例タイムズ1420号で紹介された事例です(名古屋家裁豊橋支部平成26年7月17日審判)。
本件は,日本国籍を有する申立人A及びフィリピン国籍を有するBの夫婦が,フィリピン国籍を有する未成年者(申立人Bの婚外子)であるC(未成年者)を申立人らの養子とすることの許可を求める事案ですが,養子縁組についてどの国の法律を適用すべきかにつき,通則法31条後段は養子となるべき者の本国法においてその者又は第三者の承諾又は公的機関の処分があることが定められているときはその要件も充足する必要があると規定しており,本件では,未成年者の本国法であるフィリピン法において必要となる実父の同意につき明示的な同意が無く問題となりました。
この点,審判では,現在実父の所在は不明であり,フィリピン法がこのような同意を得ることが不可能,あるいは,著しく困難な場合にまで実親の同意を要求しているものとは解されないから,本件においては,同意要件を欠くものではないと解するのが相当としています。
法の適用に関する通則法
(養子縁組)
第31条1項 養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。
また,フィリピン法においては所定の公的機関によるケース・スタディ及び6か月以上の試験監護の実施が要求されているが,本件では,未成年者は申立人らの監護下で既に6か月以上にわたり生活しているのであるから,このような事情の下において,現在の生活状況を家裁調査官が観察し,その結果を報告することで上記要件に代えることができるものと解するのが相当であるとし,また,フィリピン法13条によれば,養子縁組は裁判所のする養子決定により成立するものとされており,通則法31条1項後段の規定の趣旨に照らせば,当該決定が本件の養子縁組にも必要と解されるところ,上記養子決定は,日本の家庭裁判所のする養子縁組許可の審判をもって代えることができると解するのが相当であるとし,本件においてフィリピン法の要件も充足しているものと認めて養子縁組を許可しています。