判例タイムズ1398号などで紹介された最高裁判例です(最高裁平成25年12月10日判決)。

 

 

本件は死刑確定者と再審請求弁護人とが立会人無しで面会すること(秘密面会)許さなかった拘置所の措置に対し国賠請求がされたという事案です。

 

 

最高裁は,死刑確定者については,刑事収容施設報121条本文において,その指名する職員が面会に立ち会うか,又はその面会の状況の録音若しくは録画をすることを原則としつつ,同条ただし書は,死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のため秘密面会を許すか否かの措置を刑事施設の長の裁量に委ね,当該正当な利益を一定の範囲で尊重するよう刑事施設の長に職務上義務付けていることを指摘した上で,刑訴法440条1項が,検察官以外の者が再審請求をする場合には,弁護人を選任することができる旨規定しているところ,死刑確定者が再審請求をするためには,再審請求弁護人から援助を受ける機会を実質的に保障する必要があるから,死刑確定者は,再審請求前の打合せの段階にあっても,刑事収容施設法121条ただし書にいう「正当な利益」として,再審請求弁護人と秘密面会をする利益を有するとし,秘密面会の利益が保護されることは,面会の相手方である再審請求弁護人にとってもその十分な活動を保障するために不可欠なものであって,死刑確定者の弁護人による弁護権の行使においても重要なものであると述べてています。

 

 

 

そして,秘密面会の利益は,死刑確定者だけではなく,再審請求弁護人にとっても重要なものであることからすれば,刑事施設の長は,死刑確定者の面会に関する許否の権限を行使するに当たり,その規律及び秩序の維持等の観点からその権限を適切に行使するとともに,死刑確定者と再審請求弁護人との秘密面会の利益をも十分に尊重しなければならないというべきであり,死刑確定者又は再審請求弁護人が再審請求に向けた打合せをするために秘密面会の申出をした場合に,これを許さない刑事施設の長の措置は,秘密面会により刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあると認められ,又は死刑確定者の面会についての意向を踏まえその心情の安定を把握する必要性が高いと認められるなど特段の事情がない限り,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用して死刑確定者の秘密面会をする利益を侵害するだけではなく,再審請求弁護人の固有の秘密面会をする利益も侵害するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法となると解するのが相当であるとし,本件では特段の事情は認められないと判断しています。

 

 

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律

(面会の立会い等)
第121条
 刑事施設の長は、その指名する職員に、死刑確定者の面会に立ち会わせ、又はその面会の状況を録音させ、若しくは録画させるものとする。ただし、死刑確定者の訴訟の準備その他の正当な利益の保護のためその立会い又は録音若しくは録画をさせないことを適当とする事情がある場合において、相当と認めるときは、この限りでない。

刑事訴訟法第440条1項 検察官以外の者は、再審の請求をする場合には、弁護人を選任することができる。