令和3年4月,相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(相続土地国庫帰属法)が成立しました。

 

 

制度を利用するための手続について,まず,相続等により当該土地を取得した相続人が,法務大臣に対して,当該土地の国庫帰属についての承認申請を行うことになります(法2条1項)。なお,共有地についは,共有者全員が共同して申請を行う必要があります(法2条2項前段)。共有者中に相続等以外の原因で土地を取得した共有者がいる場合は,相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができます(後段)。

 

 

相続土地国庫帰属法

(承認申請)
第2条 
土地の所有者(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)は、法務大臣に対し、その土地の所有権を国庫に帰属させることについての承認を申請することができる。

 土地が数人の共有に属する場合には、前項の規定による承認の申請(以下「承認申請」という。)は、共有者の全員が共同して行うときに限り、することができる。この場合においては、同項の規定にかかわらず、その有する共有持分の全部を相続等以外の原因により取得した共有者であっても、相続等により共有持分の全部又は一部を取得した共有者と共同して、承認申請をすることができる。

 

 

申請をを受けた法務大臣は,申請についての審査を行い,申請が承認されない土地に該当しない限りは承認しなければなりません(法5条1項)。

承認されない土地の条件については,5条1項各号が規定しています。

管理が難しい土地であったり,土地上に残置物があったり,紛争を抱えているようなトラブル案件の土地は引き取れないということになっています。

 

(承認)
第5条1項

法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

 

法務大臣による承認がされたとしても,申請者は,負担金を納付しなければならないとされています(法10条1項)。無償では引き取ってはくれないということです。

負担金の納付があったときは当該土地の所有権が国に移転するとされており(法11条1項),納付が無ければ承認申請は却下されます。

 

(負担金の納付)
第10条1項

承認申請者は、第五条第一項の承認があったときは、同項の承認に係る土地につき、国有地の種目ごとにその管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額の金銭(以下「負担金」という。)を納付しなければならない。

 

また,偽りその他不正な手段により承認を受けたことが半径したときは,事後的に承認は取り消されます(法13条1項)。

 

 

相続土地国庫帰属制度1 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

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