建設、製造などの現場で働く「一人親方」らフリーランスの個人事業主を、アスベストや放射線などから守るため、厚生労働省は、請負契約の相手企業に安全対策を義務づける方針を固めた。アスベスト被害をめぐる訴訟で、企業に雇われている働き手だけでなく一人親方も保護対象にすべきだ、と最高裁が判断したことを踏まえた。
(12月19日朝日新聞デジタルから一部引用)
記事で触れられている最高裁判例というのは、今年の5月17日に出された一連の石綿じん肺訴訟に関するもので,争点の一つとして,安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者(一人親方等)との関係において,国の規制権限の不行使は国家賠償法1条1項の適用上違法となるかが問題となり,高裁判決は,安衛法22条,57条及び59条に基づく規制権限の保護の対象者は,安衛法2条2号において定義された労働者であり,国は,当該労働者と認められない者との関係では,規制権限を行使する職務上の法的義務を負担しない,当該労働者と認められないいわゆる一人親方及び個人事業主等との関係では,被告国の上記規制権限の不行使は違法とはならず,被告国は規制権限の不行使による責任を負わないと判断していました。
労働安全衛生法
第2条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 労働者 労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。
これに対して,最高裁は,
・安衛法57条は,労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるものの譲渡等をする者が,その容器又は包装に,名称,人体に及ぼす作用,貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない旨を定めており,同条は,健康障害を生ずるおそれのある物についてこれらを表示することを義務付けることによって,その物を取り扱う者に健康障害が生ずることを防止しようとする趣旨のものと解されるのであって,上記の物を取り扱う者に健康障害を生ずるおそれがあることは,当該者が安衛法2条2号において定義された労働者に該当するか否かによって変わるものではない。
・また,安衛法57条は,これを取り扱う者に健康障害を生ずるおそれがあるという物の危険性に着目した規制であり,その物を取り扱うことにより危険にさらされる者が労働者に限られないこと等を考慮すると,所定事項の表示を義務付けることにより,その物を取り扱う者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である。なお,安衛法は,その1条において,職場における労働者の安全と健康を確保すること等を目的として規定しており,安衛法の主たる目的が労働者の保護にあることは明らかであるが,同条は,快適な職場環境(平成4年法律第55号による改正前は「作業環境」)の形成を促進することをも目的に掲げているのであるから,労働者に該当しない者が,労働者と同じ場所で働き,健康障害を生ずるおそれのある物を取り扱う場合に,安衛法57条が労働者に該当しない者を当然に保護の対象外としているとは解し難い。
・本件掲示義務規定は,事業者が,石綿等を含む特別管理物質を取り扱う作業場において,特別管理物質の名称,人体に及ぼす作用,取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を掲示しなければならない旨を定めている。この規定は,特別管理物質を取り扱う作業場が人体にとって危険なものであることに鑑み,上記の掲示を義務付けるものと解されるのであって,特別管理物質を取り扱う作業場において,人体に対する危険があることは,そこで作業する者が労働者に該当するか否かによって変わるものではない。また,本件掲示義務規定は,特別管理物質を取り扱う作業場という場所の危険性に着目した規制であり,その場所において危険にさらされる者が労働者に限られないこと等を考慮すると,特別管理物質を取り扱う作業場における掲示を義務付けることにより,その場所で作業する者であって労働者に該当しない者も保護する趣旨のものと解するのが相当である。なお,安衛法が人体に対する危険がある作業場で働く者であって労働者に該当しない者を当然に保護の対象外としているとは解し難いことは,上記と同様である。
と判示し,国の規制権限は,労働者を保護するためのみならず,労働者に該当しない建設作業従事者を保護するためにも行使されるべきものであったというべきであると判断しています。
