判例時報2497号で紹介された事例です(水戸地裁令和2年11月4日判決)
本件はある街の町会議員同士のウェブサイト上の掲示板での名誉毀損に基づく損害賠償請求の事案です。
被告が名誉毀損行為を行ったかどうかについて,被告は,当時所有していたタブレット端末を紛失しており,被告以外の第三者が,上記タブレット端末を使用して,本件各投稿を行った可能性がある旨主張し,これに沿う被告本人の陳述書を提出したものの,証拠によれば,被告が,本件プロバイダに対し,タブレット端末の交換補償を求めた日時は,被告がタブレット端末を紛失ないし盗難されたと主張ないし陳述する時期1か月近く経過した時点であり,交換補償を申し出るまでに時間を要したことに合理的事情があったものと認めるに足りないことからすると,本件各投稿の当日である,本件端末を紛失ないし盗難されたとの被告の陳述を信用することはできず,被告の上記主張を採用することはできないと否定されています。
そして,投稿につき原告の社会的評価を低下させる名誉毀損に当たるとしたうえで,慰謝料100万円に加えて,インターネット上の掲示板における匿名での投稿について,その発信者を特定するためには,通信記録が消去されるまでの短期間のうちに必要な保全処分を行い,発信者情報開示請求訴訟を提起することが必要であり,被害者自身で手続を行うことは通常困難であるから,発信者情報の取得のために要した弁護士費用は,社会通念上相当な範囲で,名誉棄損と因果関係のある損害と認めるのが相当であると判断しています(本件では発信者情報消去禁止仮処分の弁護士費用として10万8000円,別件訴訟の弁護士費用として21万6000円の合計32万4000円)。
インターネット掲示板の書込みによる名誉棄損による損害賠償請求で調査費用が損害として認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)