判例タイムズ1489号などで紹介された決定例です(大阪高裁令和3年3月12日決定)。

 

 

本件は,母親が婚姻中に出産した子につき(出生後,親権者を母親と定めて離婚),当時,母親は不貞行為を行っており,子の父親は当時の夫ではないとして,母親が子の法定代理人として,父親とされていた当時の夫に対し,当時夫との間で性交渉は無かったこととの申立て理由に加え,子と夫との間の父子関係の確立は0%とする私的鑑定の提出をした上で親子関係不存在確認の調停を申し立てたところ,当事者間で争いが無く,親子関係不存在の合意に相当する審判がなされたところ,当時母親と不貞行為を行っていた男性が,家事事件手続法279条1項に基づく異議を申し立てたというもので,当該男性が異議の申し立てができる「利害関係人」に当たるのかが問題となりました。

 

 

家事事件手続法

第279条1項 当事者及び利害関係人は、合意に相当する審判に対し、家庭裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、当事者にあっては、第二百七十七条第一項各号に掲げる要件に該当しないことを理由とする場合に限る。

 

原審(家裁)は男性は利害関係人に当たらないと判断しましたが,高裁は,

・法279条1項本文の利害関係人とは,法律上の利害関係を有する者をいうと解されるが,法277条に基づく審判が対世効を有することを考慮すれば,審判により直接身分関係に何らかの変動が生ずる者に限られず,当該審判によって変動する身分関係を前提として,自らの身分関係に変動を生ずる蓋然性のある者も含まれるというべきであるとしたうえで,

・本件において,当該男性は,母が本件子を懐胎したと考えられる当時,母と性交渉をしたこと,本件父と母が当時に性交渉をしたかはひとまず措くとしても,少なくとも本件父と当該男性以外に,母が当時性交渉をした男性がいる事実は認められないこと,しかるところ,本件子と本件父との間に父子関係がある確率は0%である旨の鑑定書が存在すること,抗告人は,本件父及び母の双方から,本件子の実父であるとされ,本件父に慰謝料及び不当利得金を支払う旨の本件合意書を作成したり,母から認知及び養育費の支払に係る法的手続を申し立てる旨の予告を受けていることが認められることなどからすると,本件審判が確定することにより,当該男性は,母から認知請求を受け,本件子との親子関係が形成され,さらには,母から養育費の請求を受け,養育費の支払義務が形成される蓋然性があることが認められることから,

・本件審判に関し,法律上の利害関係を有すると認めることが相当であるとし利害関係人に当たることを肯定しています。

 

 

なお,あくまでも異議が申し立てられる資格があるというだけで,実際に異議が認められるかどうかは別問題ということになります。