判例タイムズ1486号で紹介された事例です(東京家裁令和2年9月7日審判)。

 

 

本件は,夫(カナダ国籍)と妻(日本国籍)が,未成年者(日本国籍)との特別養子縁組を求めたという事案です。

 

 

法の適用に関する通則法31条1項により,養子縁組については養親となるべき者の本国法によるとされ,また,養子となるべき者の本国法により公的機関の許可が必要とされる場合にはその要件も備えなければならないとされています。

本件で,妻について日本法を準拠法としてその要件を満たすこと,また,未成年者について日本法によって裁判所の許可を必要とすることは明らかです。

 

 

法の適用に関する通則法

(養子縁組)

第31条1項 養子縁組は、縁組の当時における養親となるべき者の本国法による。この場合において、養子となるべき者の本国法によればその者若しくは第三者の承諾若しくは同意又は公的機関の許可その他の処分があることが養子縁組の成立の要件であるときは、その要件をも備えなければならない。

 

 

問題はカナダ国籍である夫について,条文上はカナダ国籍が適用となり,カナダは州によって法を異にするため,夫に最も密接な州の法が適用される(法38条3項)というのが筋道となりそうです。

 

 

ただ,国際司法においては反致という理論があり,法41条では,当事者の本国法によるべき場合に,その国の法に従うと日本法になるという場合には,結局日本法が適用されるものとしており,本件ではこれが肯定された事例です。

 

(反致)

第41条 当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。

 

理由としては,カナダではケベック州を除く州の法律では英米系のコモンローを継受しており,人の身分に関する国際司法についても英国と同様の原則が取られており,それは,養子縁組については養親のドミサイル(用語は多義的ですが住居とか本拠と訳されます)があり,かつ,養親と養子が居住している国の法律によるべきものとされているとし,本件では夫は数年前から日本で生活しており,今後も相当期間に亘って日本に在住する予定となっていることや永住を希望していることなどに照らして,夫のドミサイルは日本にあり,かつ,夫も未成年者も日本に居住していることから,カナダのコモンローによる国際私法により反致によって日本法が適用されると判断しています。

 

 

その上で,特別養子縁組の要件はすべて満たしているものとして特別養子縁組を許可しています。