家庭の法と裁判31号で紹介された事例です(大阪高裁令和2年2月20日決定)。

 

 

表題のとおりですが、月額6万円の婚姻費用分担を定めた審判が下され、約1年10ヶ月後に勤務先を退職した夫が、抑うつ状態のため働くことができず再就職も困難であると主張して婚姻費用の減額を求めたという事案です(家裁は夫の申立を認めて月額3万円に減額)。

 

 

しかし、高裁は、夫の稼働能力がないことについて信用性が認められないとして申立を却下する判断をしています。

抑うつ状態との医師の診断書に付き、具体的な症状が記載されておらず、どの程度就労が制限されどのような形態であれば就労が可能であるのか明らかでないとし、自己に有利な審判を求めるために診断書を取得したものという疑い無しとしないとしました。

そして、夫が、退職後に散発的ではあるものの勤務して収入を得ていたり、衛生管理者の免許を取得したり、大学の通信課程に合格し入学予定であることなどからすると、就労困難であるといえるほどの状態であるのか不自然であること、妻との間の裁判手続きがなければ精神上は特段問題ないと審問期日で述べていることも夫の稼働能力がないとはいえないことの根拠としてあげています。

また、前件審判での婚姻費用を支払っていないのに大学の学費を納めていることも夫の申立を認めるには不相当な事情であるとしています。

 

 

前件調停成立後に妻以外の女性との間に子が出生したことと婚姻費用減額の可否 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

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農業従事者について婚姻費用の分担するだけの稼働能力がないとした原審の判断を否定した事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)