判例時報2465号・2466合併号で紹介された裁判例です(千葉家裁松戸支部令和2年5月14日判決)。

 

 

本件は、ナイジェリア国籍の前夫と離婚し、同じく同国籍の現在の夫と婚姻した女性が生んだ子どもにつき、現在の夫から前夫に対して父を定める訴えが提起され、父を確定することを求めたという事案です。

 

 

本件の特徴としては、通則法28条1項を適用した結果、子の嫡出性が重複してしまったというところにあります。

すなわち、通則法28条1項は、夫婦のいずれかの本国法を適用すれば嫡出性が認められる場合にはその子は嫡出子であると定めていますが(夫婦のうちいずれか一方の本国法で良いとすることで子の嫡出性が認められる範囲を広げ、この保護を図る趣旨とされています)、本件では前夫との関係でみると、母親である日本民法の規定に基づき離婚後300日以内の出生であったため前夫の嫡出推定が働く一方で、現在の夫との関係ではナイジェリアの国法(コモンロー、慣習法)に基づくと現在の夫につき嫡出性が認められることとなり、二人の父について嫡出性が認められるという事態となっていました。

 

 

法の適用に関する通則法

(嫡出である子の親子関係の成立)

第28条1項 夫婦の一方の本国法で子の出生の当時におけるものにより子が嫡出となるべきときは、その子は、嫡出である子とする。

 

本判決では、このような場合にも、利益状況が共通していることから民法773条に基づき父を定める訴えとして認められるとし(本来民法773条は待婚禁止期間にもかかわらず婚姻届が受理されてしまい嫡出推定が重複してしまった場合の規定)、本件においてDNA鑑定により99.9%の父子関係を認める鑑定結果がなされていた現夫につき父と定めるものとしています。

 

 

民法

(父を定めることを目的とする訴え)

第773条 第七百三十三条第一項の規定に違反して再婚をした女が出産した場合において、前条の規定によりその子の父を定めることができないときは、裁判所が、これを定める。