家庭の法と裁判29号で紹介された事例です(東京高裁令和元年11月12日)。
本件は,別居中の夫婦(子ども2人)の婚姻費用分担に当たり,家裁が夫に対して婚姻費用の支払を命じたところ(教育費につき,私立幼稚園のほか,塾,バレエ,ピアノの費用につき,医師である夫の収入にも鑑みて,算定表によった場合に想定されている標準教育費約13万円余を超過する部分の2分の1を加算),夫から抗告があり,その理由の一つとして,2019年(令和元年)10月から開始された幼児・保育の無償化により,制度の対象となる本件の長女については月額2万5700円が小学校入学前までの間給付されるから,その分は分担額から差し引くべきだとの主張がなされました。
類似した事例として,高校授業料無償化についての裁判例があります(福岡高裁那覇支部平成22年9月29日決定 私的扶助を補助するものであるとして,婚姻費用の減額事由とはならない旨を判示)。
婚姻費用・養育費分担の算定に当たり収入として考慮しないもの | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)
本件でも,幼児教育の無償化は子の監護者の経済的負担を軽減すること等により子の健全成長の実現を目的とするものであることから(子育て支援法1条参照),このような公的支援は私的扶助を補助する性質に過ぎないして,減額事由に当たらないと判断しています。