相続人とは、死亡した被相続人の相続財産を包括的に承継することができる一般的資格を有する者をいいます。包括的に承継しますので、相続財産のうちのどれか特定の財産のみを承継するということではなく、すべての相続財産を承継します。また、相続財産には債務も含まれます。
まず、亡くなった被相続人の配偶者は必ず相続人になります。
被相続人に子がいるときは、子が第一順位の相続人になります。
被相続人に子(又はその代襲相続人)がおらず、直系の尊属(父母や祖父母)がいるときは、直系尊属が第二順位の相続人です。なお、父母も祖父母も生存している場合は、被相続人と親等の近い父母が相続人になります。
被相続人に、子(又はその代襲相続人)も直系の尊属もいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人になります。なお、その兄弟姉妹がすでに死亡しているときは、その子(被相続人から見た場合の甥姪)が相続人になります。
民法891条は下記の5つの類型について該当する相続人は相続人となることができないと定めており、これを相続欠格といいます。
たとえ相続人であっても、その相続人に相続を認めるべきではない重大な事由があるときは、一般の法感情の見地から相続権を奪うというものです。「血塗られた手は、遺産を受け取ることができない」という法格言で言い表されることもあります。
1 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
2 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
3 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
4 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
また,相続人の廃除とは、相続欠格のように当然に相続権を失うほどには重大ではないが、相続人の非行がある場合に、被相続人の請求に基づいて家庭裁判所が相続人の相続権を奪うという制度です。
相続欠格を生じたり廃除された場合は相続人としての資格を失うことになります。
但し,民法第887条2項,3項により,相続欠格,相続人の廃除が生じた場合であっても,それは当該相続人(非行者)のみに生じるものであり,その子や孫などの代襲相続人の相続適格に影響は与えません。
(子及びその代襲者等の相続権)
第887条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相 続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。