判例タイムズ1475号で紹介された事例です(東京地裁令和元年7月3日判決)。

 

 

本件は,夫(代表社員)と妻の2名が社員である合同会社(夫のブログの運営を会社が受託する形でのアフェリエイト事業)につき,妻が,会社法859条3号から5号までの事由があるとして(不適切な税務申告や経費支出,業務報告の懈怠などを主張),夫を除名するように求めたという事案です。なお,夫婦間では離婚訴訟が裁判所に係属していたとのことなので夫婦関係悪化に伴う一連の動きとして本件が提訴されたことが窺われます。

 

 

会社法

(持分会社の社員の除名の訴え)

第859条 持分会社の社員(以下この条及び第八百六十一条第一号において「対象社員」という。)について次に掲げる事由があるときは、当該持分会社は、対象社員以外の社員の過半数の決議に基づき、訴えをもって対象社員の除名を請求することができる。

 業務を執行するに当たって不正の行為をし、又は業務を執行する権利がないのに業務の執行に関与したこと。

四 持分会社を代表するに当たって不正の行為をし、又は代表権がないのに持分会社を代表して行為をしたこと。

 前各号に掲げるもののほか、重要な義務を尽くさないこと。

 

まず,条文上,「過半数の決議」が必要となるところ,社員が2名の場合にはこの要件を満たし得ないので除名請求ができるのかか問題となりますが,この点について本判決では判断がされていませんが,社員が1名となった場合でも会社の解散事由とはならなくなった経緯から請求を可能とする見解があり,本判決もこの立場に立ったうえで判断をしています。

 

 

そして,除名については会社から強制的に構成員として排除するというものであるから,当該社員の行為が形式的に条文所定の事由に該当するというだけでは足りず,当該行為によって当事者間の信頼関係が損なわれ,当該合同会社の事業活動自体が成り立たなくなるため,当該社員の排除が事業の継続のためにはやむを得ないといえるような事情が必要であると述べています。

 

 

そして,そもそも,本件の合同会社の事業は夫が個人事業として始めた事業から始まったもので,業務を行っているのが夫であることからそもそも夫を除名してしまうと合同会社の事業が成り立たなくなってしまうこと(除名は事業の継続のためになされるものであるのに除名したことで事業が成り立たなくなってしまうのではあべこべとなってしまう),また,妻が主張した事実を前提としてそのことで社員相互間の信頼関係が一定程度損なわれるとしても,会社の事業継続に著しい支障があるとまではいえず,除名すべき理由は認められないと判断しています。