墓地に墓石を建てようとする場合,墓地の指定の石材店でなければ墓石を立てることができないという墓地細則が定められていることがあります。なお,公営墓地では原則として指定石材店制度は無く,寺院墓地と民間墓地について定められていることがほとんどです。

 

 

このような指定石材店制度が墓石業者選択の自由を奪うものとして独占禁止法に抵触しないか問題となります。

独占禁止法の適用対象は,「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」とされているところ(同法2条1項),寺院が檀家に墓地を提供することは布教活動の一環であって「事業」にはあたらないのではないかという見方もできますが,墓地経営の実態に照らして「事業」であると評価することも十分に可能であるように思われます。

 

 

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)第2条1項 この法律において「事業者」とは、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。事業者の利益のためにする行為を行う役員、従業員、代理人その他の者は、次項又は第三章の規定の適用については、これを事業者とみなす。

 

 

仮に墓地経営が独占禁止法の適用対象となるとして,指定の石材店以外の業者に墓石を立てさせることを認めないことは,「不公正な取引方法」(独禁法19条),とりわけ,公取委が定めている「抱き合わせ販売等」(相手方に対し,不当に,商品または役務の供給に併せて他の商品または役務を自己または自己の指定する業者者から購入させ,その他事故又は事故の指定する事業者と取引するように強制すること)に抵触しないかが問題となります。

 

独占禁止法第十19条 事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。

 

文言のみをみると該当する可能性もありそうですが,実質的な観点からみると,墓地経営者が墓石業者を指定するのは一定の水準を維持する石材業者に墓石の維持を行わせて墓地の管理を行うためであることからすると,世間相場から著しくかけ離れた高額負担を強いるような場合を除いては,直ちに独禁法に抵触するものではないと考えられます。

 

 

ただ,独禁法に抵触することをさらに避けるために,指定業者を1社では無く複数指定するなどして墓石購入者が選択できるようにしておくという工夫も求められているものと言うことができます。