判例時報2440号で紹介された事例です(京都地裁令和元年10月24日判決)。

 

 

本件は,公立高校の教師兼ソフトボール部の監督(甲子園出場の強豪校の野球部に所属していた経験があり,教師としては初めての赴任校で今回の事故があったとのことです。)が,女子部員であった原告(小学校の時期に野球経験があり,本件ソフトボール部では上手い選手であったようです。)に対してノックしてたところ,左手小指を骨折したという事故が起こったことから,学校を設置管理する自治体に対して国賠請求がされたという事案です。

 

 

本件ソフトボール部はそれほど強いチームではなく,選手も初心者が多く試合が成り立たないような状態という引継ぎを受けて,当該教師は監督に就任したようですが,その中でも今回怪我をした原告が捕球技術もあったことからキャッチャーを任されていましたが,部に備え付けのキャッチャーミットが会わないこともあってか,本件の怪我をする前月の練習試合では左手親指を突き指(捻挫)するという怪我をしてしまっていました。

 

 

サード線の強い打球を処理できずにホームランになってしまうということが数回あったことから,本件事故が起こった日には,サードのせんきゅの強化のためノックがされましたが,サードの選手の見本とするという目的で,原告もサードのノックを受けさせられることになり,当該教師は対戦した強豪校の打球の中で一番強かたものをイメージしながら同程度の強い打球を放ってノックしていたところ,原告が捕球した際に後遺症が残るような左手小指の骨折をしてしまうという事故が起きたものです。

 

 

判決では,原告が怪我をしていたことを知っていたのに,他の選手の見本とするためという必要性が高くないノックに参加させて本件事故が起こったという経緯から,生徒の体調に配慮して適切な指導を行うべき注意義務があったのに,原告が何度も痛みを訴える程度に左手の親指の怪我をしているという状態であったことを認識していたのにノック練習への参加の可否を尋ねるだけで怪我の程度の聞き取りを行ったりすることなく,ノックの強さを調節するということもしなかったという教師の過失を認めて,自治体に賠償を命じています(原告においてもノック練習への参加が難しいことを伝えたり打球の強さを弱めるように要望すること可能であったとして,監督と部員という関係性などを考慮して過失相殺2割。)。