https://www.tokyo-np.co.jp/article/34409

 

 

岡山市が4月、自宅で受ける公的な介護サービスが足りないとして増加を求めた難病の男性(49)側に対し、同居する高校2年の娘(16)による介護で補うよう求めていたことが、9日分かった。男性側は娘に過度な負担がかかると抗議。市は「『介護して』とは言っていない」と発言を修正し、サービス増加は一部を認めた。

(6月9日東京新聞から一部引用)

 

障害者自立支援法に基づいて行政が行う介護給付(具体的にはヘルパーの派遣)について,支給量が不足しているとして行政に対して支給量の増加を求めるという類型の問題を介護支給量の問題といいます。

 

 

この点が問題となった著名の裁判例としては和歌山ALS訴訟というのがあり(和歌山地裁平成24年4月25日判決),記事の男性と同様にALSの患者(昭和11年生まれ)について,その妻(昭和13年生まれ)が起床している間は原則としてすべて妻が介助することを前提とした上で支給決定をがなされたのに対し(1日当たり8時間に緊急対応分として20時間を加算),判決では,男性がほぼ常時見守りも含めた介護サービスを必要としており,妻の年齢や健康状態などを考慮すれば,妻が介護しているという要素を過大に評価したものであり(但し,妻による介護を考慮すること自体は許されるとしています),なされた支給量の決定は裁量権を逸脱し違法であるし,少なくとも1日21時間分は職業介護人による介護サービスを受ける必要があるとした上で介護支給の義務付けをしたというものです(21時間分のうち3.5時間は介護保険法に基づく介護支給を受けていたため残りの17.5時間について支給を義務付けた)。

 

 

本件でも類似した状況にあると言え,難病の父親について未成年の子に事実上,過度な介護を強要すれば,子の教育を受ける権利や健全な発育を妨げることになるものであり,仮に行政側がそのようなことを求めていのであるのが事実であるとすれば,前記の裁判例の趣旨などに照らしても問題があるのではないかと思われます。