株主総会に関する資料の一部は、株主総会の2週間前までに企業のホームページなどで公開することで、株主に郵送する代わりとすることが認められていますが、法務省は、企業側の負担を軽減するため、ホームページなどで公開できる資料の対象を拡大することになりました。
追加されるのは、賃借対照表と損益計算書のほか、事業報告に関する一部の資料で、法務省は今週中にも省令を改正し、施行したいとしています。(5月12日NHKニュースウェブから一部引用)
会社法では,大半の上場企業で採用されている株主の書面投票又は電子投票を認める株主総会を招集する場合や取締役会を設置している会社が定時株主総会を招集する場合には,招集に際して,株主総会参考書類や計算書類などを原則として書面で添付することが求められています(会社法299条2項,301条1項,302条1項,437条など)。
現行法上も,株主総会参考資料等については株主からの個別の同意を得ればインターネットを利用して提供することも可能ですが,不特定多数の株主が占める上場企業においては現実的に採用されている制度ではありません。
株主総会参考資料等の「一部」については,現行法上もウェブ開示が認められており,このうち,現在準備が進められている6月下旬の定時株主総会との関連でいえば,招集通知に添付すべき計算書類等のうち「株主資本等変動計算書又は個別注記表に係るもの」に限ってウェブ開示が認められており(会社法437条,計算規則133条4項),多くの企業が定款で採用していますが,記事にある通り,貸借対照表や損益計算書といった重要な書類についてはウェブ開示の対象に含まれていません。
記事にある省令の改正ではこの辺りの規則の条項を改正することになります。
(計算書類等の株主への提供)会社法第437条 取締役会設置会社においては、取締役は、定時株主総会の招集の通知に際して、法務省令で定めるところにより、株主に対し、前条第三項の承認を受けた計算書類及び事業報告(同条第一項又は第二項の規定の適用がある場合にあっては、監査報告又は会計監査報告を含む。)を提供しなければならない。
会社計算規則133条4項 提供計算書類に表示すべき事項(株主資本等変動計算書又は個別注記表に係るものに限る。)に係る情報を、定時株主総会に係る招集通知を発出する時から定時株主総会の日から三箇月が経過する日までの間、継続して電磁的方法により株主が提供を受けることができる状態に置く措置(会社法施行規則第二百二十二条第一項第一号ロに掲げる方法のうち、インターネットに接続された自動公衆送信装置(公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう。以下この章において同じ。)を使用する方法によって行われるものに限る。第八項において同じ。)をとる場合における第二項の規定の適用については、当該事項につき同項各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法により株主に対して提供したものとみなす。ただし、この項の措置をとる旨の定款の定めがある場合に限る。
なお,昨年末に成立公布された会社法改正においては,上場されている公開企業においては,株主総会参考資料,貸借対照表や損益計算書を含む書類全般についてウェブ開示が認められることになりました・・・というよりも,ウェブ開示が義務付けられることになり(株主総会資料の電子提供制度),施行日を効力発生日とする定款変更がされたものとみなされることになっています(その後,会社自身による登記が必要となります)。
なお,書面による書面の交付を希望する株主は,総会での議決権行使の基準日までに書面交付請求を申し出ることが必要とされています。
改正された会社法は未施行ですが,くしくも,今般の新型コロナ拡大が,その対応を事実上早めたということができます。
【コロナ危機下の株主総会、ネットのみは不可】
https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12585613920.html
【株式会社の計算書類・事業報告・附属明細書】
https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12273640572.html