https://www.jiji.com/jc/article?k=2020030401237&g=soc

 

 

 最高裁は1960年、議会による出席停止処分について「内部規律の問題で、裁判の対象とするのは相当ではない」と判示。一審仙台地裁は判例に従い、元市議側の訴えを却下した。二審仙台高裁は「出席停止とはいえ、議員報酬の減額につながる場合は裁判の対象となる」と審理を地裁に差し戻し、市側が上告していた。 

(3月4日時事ドットコムから一部引用)

 

憲法学において「司法権の限界」という論点に関するもので,法律上の争訟ではあるが,事柄の性質上,裁判所の司法審査に適さないと認められるものとしてどのようなものが認められるか,本件のような地方議会の懲戒処分のほか,大学や政党,宗教団体,弁護士会といった一定の自律性をもつ自主的な団体が決めたことについて国家権力である裁判所がどこまで審査できるかという問題になります。

 

 

国会の各議院の自律性に属する行為(懲罰や議事手続などの内部の議事手続)については,憲法自体が司法権に属さない例外として定めているとして裁判所は審査することができないというのが判例です(警察法改正無効事件 法改正の議決の手続が正しく行われたかどうかについて裁判所は判断できないと判示したもの)。

 

 

憲法58条2項 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする。

 

地方議会の場合には憲法上で自律権について司法権の例外に属するとして明記されているわけではないこともあり,国会(議院)と比べると,そのすべてに裁判所の司法審査が及ばないということではなく,具体的に分かりやすく言うと,出席停止の場合には議会の内部事項に留まるものとして司法審査の対象外,除名処分になると議会の外にいわば追放される処分であり議会内部の問題に留まらないとして審査対象になるというのが大まかな判例の立場です。

 

 

憲法第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

 

今回,出席停止処分が司法審査の対象となり得るとした二審の判断についてこれまでの判例の判断に沿っう形で判決を下すのであれば担当する小法廷で判断をすればよいものを大法廷に回付したということは,裁判官の中でも判断が分かれているということが窺えます。

記事でも引用している1960年(昭和35年)の最高裁判決においても,出席停止といっても任期一杯までの場合には実質的には除名と変わらないから司法審査の対象とすべきであるとするなどの意見が付されていることもあり,必ずしも,前記のような区分けが全員一致して支持されていたわけではありません。

今回,議員報酬の減額につながる場合には単なる地方議会の内部の問題に留まらず権利の問題として裁判所が介入すべきであるという区分けはそれなりに説得力があるのかなと思いました。