判例時報2427号で紹介された事例です(東京高裁平成30年11月20日決定)。

 

 

本件は,婚姻後,口喧嘩などが多くなり同居に耐え切れなくなったことから,約3歳の子どもを連れて母親に知らせることなく別居した父親が,その後,母親から子どもの引渡しを求める審判を申し立てられ,これが認められたことから(監護者は母親に指定),子どもを任意に母親に引き渡した後,面会交流を求めたという事案です。

 

 

家裁は,父親が子どもを連れて計画的に別居を開始したという事実はあるもののその後裁判所による引渡しの審判を受けて母親に任意に子どもを返していることや調停手続き後に不適切な面会交流でのかかわり方をしたことはなかったことなどから,面会交流を認めないように求めた母親の求めを退け,月1回,5時間の面会交流を認めました。

 

 

高裁においても同様の判断がされましたが,ただ,面会交流は継続的に行われるべきであり,母親が子どもが連れ去られるのではないかという懸念を抱えたまま面会交流を行うことは適切ではなく,調停申し立て後に数回行われた父親と子どもとの面会交流は弁護士事務所において母親が衝立越しに様子がうかがえる状態でなされたものであり,こうした措置が取られなくなった場合に子どもが連れ去られるのではないかという母親の懸念にも十分配慮することが必要であるとして,母親が面会交流に立ち会うことができるという条項を追加するとの判断をしたものです。

 

 

なお,このような場合,第三者機関の利用というのが適切であるように考えられるところ,この点については,父親が反対していて,費用負担の問題が生じ,婚姻費用の支払をめぐって面会交流が中断したという経緯もあったことなどから,本件では適切ではないと判断がされています。