判例タイムズ1460号などで紹介された最高裁判例になります(平成31年3月5日判決)。

 

 

養子縁組の無効を確認する訴えは,無効であることが確定すると訴訟当事者のみならず,その後すべての第三者に対しても効果が及ぶことになるので(対世効),無制限に養子縁組無効の訴えが提起できるということになると効果が強すぎることになるという観点から,第三者が養子縁組無効確認の訴えを提起する場合,養子縁組が無効であることにより「自己の身分関係に関する地位」に直接影響を受けることのない者は訴え提起の法律上の利益を有しないとされ(判例),原告適格に一定の絞りが掛けられています。

 

 

本件では,妻の叔父の配偶者Aからその遺産のすべてを遺贈された包括受遺者Bが,Aと養子縁組をしたC(Bの妻の弟)から遺留分減殺請求を受けたことから,Bが検察官に対して養子縁組無効の確認訴訟を提起したというものです(Aが死亡していたため検察官が被告となった。人訴法12条3項)。

 

 

Bからすれば,養子縁組無効が確認されCが養子という立場でなくなれば,その主張している遺留分減殺請求も成り立たなくなるのでこのような訴えを提起したものと思われますが,たとえ遺留分を侵害していたとしてもそれだけではAの遺言は無効ということにならず,養子縁組が有効であろうとなかろうとBの「身分関係に関する地位」には変わりがなく,単に「財産上の権利義務の影響」を受けるにすぎず,このような場合にBに養子縁組無効の訴えを提起する原告適格は存しないと判断されています。

 

 

もちろん,養子縁組無効の訴えを提起することができないというだけで,Cから起こされた遺留分減殺請求訴訟に対して防御するための主張として養子縁組の無効を主張することはできます(この場合,養子縁組無効が認められたとしても,その効果は訴訟当事者であるBC間の当該訴訟のみに留まるということになります)。