世界最大手の助言会社、アメリカの「ISS」は、今月、上場企業およそ900社を対象に社外取締役の割合を3分の1以上にすべきだという新たな指針をまとめました。このうち373社が基準を満たしていないということで、今後も基準に満たない場合、株主総会で取締役選任の議案に反対するよう株主に勧めています。
日産のカルロス・ゴーン前会長をめぐる事件などもあって、会社の経営体制の在り方が注目されているだけに、ことしの株主総会に向けて、社外取締役を増やしたり、社内出身の取締役を減らしたりと、対応を迫られる企業がありそうです。
(2月24日NHKニュースウェブから一部引用)
おさらいとして,社外取締役についての会社法の規定は次のとおりとなっています。要するに,社外取締役とは,株式会社の取締役であっても業務を執行せず,かつ,親会社や故会社や経営陣などとの間に一定の利害関係を有しない者(会社法2条15号イからホのいずれに該当しない者)をいうことになります。
会社法2条十五号 社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
委員会型の会社(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社)においては少なくとも2名以上の社外取締役を置かなければならないこととされていますが(会社法331条6項,400条1項3項),これ以外の形態の会社では,たとえ上場会社であっても社外取締役を置くことは義務ではありません。
この点については,平成26年の会社法改正において社外取締役設置の義務化が議論されましたが,義務化は見送られ,代わりに,上場会社等には定時株主総会において社外取締役を置かない理由を説明することが求められるなどのルールが規定されることになりました。
(社外取締役を置いていない場合の理由の開示)会社法第327条の2 事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。
なお,その理由として,既に社外監査役が2名以上いることを理由とすることはできないとされています。
(社外取締役を置いていない場合等の特則)会社法施行規則第74条の2第3項 第一項の理由は、当該株式会社のその時点における事情に応じて記載しなければならない。この場合において、社外監査役が二人以上あることのみをもって当該理由とすることはできない。
現在,さらに会社法を改正して上場企業等に社外取締役の設置を義務付けることも議論されているところです。
ただ,思うのですが,会社法の分野のコーポレートガバナンスというのは,長年に亘って議論されいろいろな仕組みも整えられてきているのですが,それでもなおコーポレートガバナンスの機能不全による問題が指摘されているというのは,完全な制度というものはないということやいくら制度を整えたとしても結局のところ運用するのは制度の趣旨に沿って正しく運用しようという人の心構えの問題であるということを感じています。