https://mainichi.jp/articles/20190131/k00/00m/040/065000c
容疑者は一時保護を受け、学校に「通報したのか」「訴訟を起こすぞ」などと詰め寄った。保護は同12月27日に解除されたが、容疑者が「アンケートで(被害を訴えていることが)分かったんだろ。実物を見せろ」などと学校への不信感をあらわにしたため、学校から連絡を受けた市教委職員が翌18年1月15日、心愛さんが被害を書き込んだアンケート用紙のコピーを容疑者に渡した。
(1月31日毎日新聞から一部引用)
亡くなった女の子が必死で助けを求めたアンケートに込めた思いを考えると本当に胸が痛むものがあります。
学校にまつわるトラブルのすべてについて弁護士が解決に寄与できるわけではありませんが,今回のようなケースについては,学校と保護者との間の一種の紛争状態であり,是非を判断して保護者からの理不尽な要求をはね付けること,そのためのサポートを担うことができたという点で,そのような役割を担う弁護士がいれば展開もかなり違っていたものになったのではないかと思うところがあります。
本当かどうかは分かりませんが,「訴訟を起こすぞ」と言われて畏怖してしまったというのであれば,弁護士に一言相談してもらえていれば,そんなことは全く怖がる必要はないことであったことは明らかであり,また,女児の同意書と引き換えにアンケートを渡したということも報道されていますが,被害を受けている当事者である10歳の女児の同意書があったところで意味のないものであることも弁護士に相談してもらえていれば明らかなことでした。
学校や教育委員会の担当者個人の資質を責めるというよりも,弁護士に簡単にアクセスできない(市や教育委員会にも顧問の弁護士はいるのではないかと思いますがこの弁護士に簡単に相談できない),訴訟を起こされたり,関係者と対立関係になってトラブルが解決できない状態となると人事考課としてマイナスになるというような風潮があったのであるとすれば,組織としての問題があったと評価されても仕方ないことだと思います。
なお,児童福祉法12条3項では,都道府県に児童相談所への弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うよう義務付けています。
児童福祉法第12条3項 都道府県は、児童相談所が前項に規定する業務のうち法律に関する専門的な知識経験を必要とするものを適切かつ円滑に行うことの重要性に鑑み、児童相談所における弁護士の配置又はこれに準ずる措置を行うものとする。
今回,亡くなった女児は児童相談所にも一時保護されていたが,保護解除となり,その後の対応は学校に任せきりであったという報道もされているところです。
児童相談所への弁護士の配置ということは法律的にも運用としても進められているところですが,縦割り行政の弊害で,学校や教育委員会への弁護士の配置やアクセスの確立ということについては,研究はされているようですが,あまり進んでいないようです。
児童虐待の防止という点では同じ目的なのであるから,児童相談所の弁護士と共通であってもよいから,学校や教育委員会からも簡単に弁護士にアクセスできるようにしていくことが早急に求められるのではないかと思います。