欠席裁判(民事)

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刑事事件の「欠席裁判」についての処理は以前書いた通りですが,今回は民事裁判での「欠席裁判」の処理の流れです。

 

 

【欠席裁判 刑事】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12415484524.html?frm=theme

 

 

民事事件の場合,刑事事件とは異なり,訴状などの書類が当事者にきちんと送達されているということを前提として,手続保障がされている以上は,後はどう対応するかは欠席するかどうかも含めて「自己責任」ということになっています。

 

 

このことが最も端的に表れているのは,自白擬制と呼ばれるルールで,必ずしも欠席した場合だけに限られないのですが,指定された期日に欠席するなどして相手方の主張する事実を争うことを明らかにしなかった場合には,その事実を自白したものとみなすものとされています。例えば,訴状にお金を貸したのに返済がないということが書かれてあったとして,期日に答弁書も出さずに欠席した場合には,たとえ,お金を借りたことがなかったとしても,借りたということを前提として判決が下されてしまうということになります。

なお,みなされるのは事実のみですので,事実を前提とした法律解釈や適用については,必ず相手方が主張している通りになるとは限りません。例えば,慰謝料として1億円請求されていたとしても,その通りに認められるということにはならないということです。

 

 

(自白の擬制)
民事訴訟法第159条 当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、その事実を自白したものとみなす。ただし、弁論の全趣旨により、その事実を争ったものと認めるべきときは、この限りでない。
2 相手方の主張した事実を知らない旨の陳述をした者は、その事実を争ったものと推定する。
3 第一項の規定は、当事者が口頭弁論の期日に出頭しない場合について準用する。ただし、その当事者が公示送達による呼出しを受けたものであるときは、この限りでない。

 

但し,自己責任ということで済ませられる民事訴訟ではなく,離婚や離縁などの人事訴訟については公益的な側面もあるため,自白擬制は働かないということになっています(人訴法19条)。

 

(民事訴訟法の規定の適用除外)
人事訴訟法第19条 人事訴訟の訴訟手続においては、民事訴訟法第百五十七条、第百五十七条の二、第百五十九条第一項、第二百七条第二項、第二百八条、第二百二十四条、第二百二十九条第四項及び第二百四十四条の規定並びに同法第百七十九条の規定中裁判所において当事者が自白した事実に関する部分は、適用しない。

 

民事訴訟では欠席すると敗訴する危険性があるということで危ないのですが,第一回目の期日だけは,特に被告については一方的に期日が指定されていることもあって裁判所に行けないこともあるため,答弁書を出して争うことを明記しておけば,その答弁書を陳述したものとみなしてくれることとなっています。

 

(訴状等の陳述の擬制)
民事訴訟法第158条 原告又は被告が最初にすべき口頭弁論の期日に出頭せず、又は出頭したが本案の弁論をしないときは、裁判所は、その者が提出した訴状又は答弁書その他の準備書面に記載した事項を陳述したものとみなし、出頭した相手方に弁論をさせることができる。

 

 

争っていたのに裁判の途中から当事者が来なくなってしまうということもあります。

来なくなったとはいえ争っている以上は,裁判所しては証拠によって事実を判断することになりますが,弁論の全趣旨といって,当事者の態度も考慮して事実認定することとなっていますので,欠席して主張しなくなった当事者の態度についても一つの材料として判断されてしまう可能性があることになります。

 

 

(自由心証主義)
民事訴訟法第247条 裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。

 

 

また,当事者双方が期日に欠席して1か月以内に期日指定の申立てがない場合などには,「やる気がない」として訴訟自体が取り下げられたものとみなされることとなっています。

 

(訴えの取下げの擬制)
民事訴訟法第263条 当事者双方が、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をした場合において、一月以内に期日指定の申立てをしないときは、訴えの取下げがあったものとみなす。当事者双方が、連続して二回、口頭弁論若しくは弁論準備手続の期日に出頭せず、又は弁論若しくは弁論準備手続における申述をしないで退廷若しくは退席をしたときも、同様とする。