https://www.yomiuri.co.jp/national/20181009-OYT1T50032.html

 

 

 

同署幹部によると、逮捕されたのは千葉県柏市の無職の女(39)。調べに対し、男性裁判官を名指しし、「自分の訴の裁判官で、不満があった。何とかしないといけないと思った」と供述している。着ていたワンピースの中から木製のつえ(長さ約60センチ)が見つかり、同署は、このつえで殴ったとみて調べている。

(10月9日読売新聞オンラインから一部引用)

 

 

裁判所というところは決して楽しいところではなく,紛争の渦中にいる当事者,関係者の負の感情が集まっている場所ですので,こうした事件が時折起こります。ターゲットになるのは裁判官だけではなく,検察官や弁護士も同様な被害を受けることがあります。

 

 

 

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事件までにはならなくても,裁判所のロビーで泣きながら倒れこんでしまっている人や職員に罵声を浴びせながら人だかりができていることなどは裁判所ではそれなりによく目にする光景です。そうした騒動を目にするといつも横目に見ながら通り過ぎていますが,かなりもめている場合どうやってお引き取り願っているんだろうなといつも思います(裁判所の職員の人が「隣に弁護士会館があるから弁護士さんにでももよく相談してみて」とか言っているのを聞くとこっちに回そうとしているんだなと苦笑してしまいます。たいていすでに相談しているのであまり効果はなさそうですが)。

 

 

今回はそれほどの大ごとにはならなかったとはいえ,裁判所内部でもこうした事態に備えて何らかの対策は検討することになるのでしょう。裁判官が裁判所で襲われるというのは私も含めた一般市民にとっては体感治安として心配になります。

 

 

 

ところで,今回被害を受けた裁判官は加害者の事案を担当していた裁判官ということのようですが,その事件は続くわけで,今後どうなるのかというところですが,民訴法には,裁判官が自動的に担当から外れる除斥という制度がありますが見たところ,事件の加害者被害者の関係であるときは該当がないようです(規定があってもよさそうですが 1号の「事件」というのはあくまで担当している当該民事事件のことです)。

 

 

(裁判官の除斥)
民事訴訟法第23条 裁判官は、次に掲げる場合には、その職務の執行から除斥される。ただし、第六号に掲げる場合にあっては、他の裁判所の嘱託により受託裁判官としてその職務を行うことを妨げない。
一 裁判官又はその配偶者若しくは配偶者であった者が、事件の当事者であるとき、又は事件について当事者と共同権利者、共同義務者若しくは償還義務者の関係にあるとき。
二 裁判官が当事者の四親等内の血族、三親等内の姻族若しくは同居の親族であるとき、又はあったとき。
三 裁判官が当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四 裁判官が事件について証人又は鑑定人となったとき。
五 裁判官が事件について当事者の代理人又は補佐人であるとき、又はあったとき。
六 裁判官が事件について仲裁判断に関与し、又は不服を申し立てられた前審の裁判に関与したとき。
2 前項に規定する除斥の原因があるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、除斥の裁判をする。
 

 

ただ,事件の加害者被害者の関係であるということは裁判の公正を妨げるべき事情があると言えますが,民訴法上は,裁判官の側からは担当を外れることができず,あくまでも当事者からの申立てが必要とされています。

 

(裁判官の忌避)
民訴法第24条 裁判官について裁判の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、その裁判官を忌避することができる。

 

とはいえ,さすがに裁判官も担当を続けられないと思うでしょうから,このような場合には規則上,回避という制度があり,監督権を有する裁判所の許可を得て担当替えをしてもらうということになりそうです。

 

 

(裁判官の回避)
民事訴訟法規則第12条 裁判官は、第二十三裁判官除斥)第一又は第二十四裁判官忌避)第一規定する場合には、監督権を有する裁判所許可を得て、回避することができる