判例タイムズ1451号で紹介された事例です(大阪地裁平成30年3月23日判決)。

 

 

本件は,ミニチュアダックスフンド(本件犬)を散歩させていた飼い主がリードを放してしまったため,本件犬が走り出してしまい,本件犬が現れたためランニング中であった被害者が驚き転倒したことにより負傷したという事案です。

 

 

動物占有者(買主)の責任については民法718条に規定があり,原則として動物が加えた損害を賠償すべき責任があるものとされています。

 

 

(動物の占有者等の責任)
民法第718条1項 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。

 

本件でも,判決において,動物は予期しない行動をとることがあるから,動物占有者は動物を散歩させる際は動物を係留させる義務を負うとされ,本件でも飼い主は当該義務に違反したと認定されており,また

,その過失の程度は重いとされています。

本件はミニチュアダックスフンドとはいえリードに繋ぎながら散歩させていたという事例ですが,小型犬なので人にかみつくようなこともないだろうということでリード無しで散歩させている人を時折見かけることがありますが,人にかみついてけがをさせるというだけではなく,本件のように,本件のように突然走り出してこれを避けようとした歩行者が転倒する,自動車,自転車,バイクの事故を誘発するといった場合にも責任を問われることになるので注意して頂きたいものです。

 

 

さて,本件では,飼い主に注意義務違反(過失)があったことを前提として,被害者にも1割程度の過失があったとされていますが,これは,リードから離れた動物がいることまでを予見する義務まではないとはいえ,見通しの悪い道路をランニングするに際しては,前方を注意して第三者等と衝突することがないように適切に進行すべき義務を負っていたとし,被害者の転倒はそのような注意義務違反もあって引き起こされた面もあると認定されています。

 

 

被害者が後遺症を伴うけがをしてしまったこともあって,本件で賠償を命じられた賠償額は約1300万円弱であり,飼い主は個人賠償責任保険に入っていたため良かったものの,保険に入っていなかったとしたら個人ではすぐには払いきれないような大きな金額です。

動物を飼うに際しては万一に備えて本件のような事故が填補されるような保険に入るということも忘れないようにしたいものです。