https://www.yomiuri.co.jp/national/20180815-OYT1T50053.html

 

 

 

発表によると、13日午後6時45分頃にパンを購入した札幌市北区の40歳代女性が14日、「パンに針が刺さっていた」と店に連絡した。女性にけがはなかった。同じ種類のパンは、13日午後1時頃から店頭で販売されていたという。同署が偽計業務妨害容疑で調べている。

(8月15日読売新聞オンラインから一部引用)

 

記事の事件では「偽計」業務妨害罪ということで捜査がされているということです。

偽計業務妨害罪は刑法233条に規定されています。

同じく業務を妨害する罪として手段を「威力」とするものについては威力業務妨害罪として刑法234条に規定されており,刑罰としては同じになります。

 

 

(信用毀損及び業務妨害)
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

 

よく報道などもされて耳にすることも多い偽計(威力)業務妨害罪ですが,偽計とは人を欺罔,誘惑し,或いは他人の錯誤又は不知を利用する違法な行為,威力とは,人の意思を制圧するに足りる勢力を用いることと定義づけられてはいます。

 

 

本件のような売り物である食品に針を刺すといった行為はお店に対する業務妨害罪となるわけですが,針を刺すという人にけがをさせかねない危険な行為ということを考えると,偽計ではなく威力ではないかとも思われますが,本件の場合,客が連絡してくるまで被害者であるお店はパンに針が刺さっているということを知らずその意思を制圧されたわけではないので威力ではなく,他の商品にも針が刺さっているかもしれないというお店の錯誤を誘発させる偽計ということになり,そのような行為によって商品の点検をするなどさせてお店の業務を妨害したということになります。

 

 

犯人がお店に電話などをして「商品に針を仕込んだ。」と告げた場合には,お店の意思を制圧するに足りるだけの勢力を用いたということになり,威力業務妨害ということになります。

 

 

偽計か威力かについてはさきほどのような定義だけでは区別することが難しいこともあり,その場合には,ひそかに行われたものか公然と行われたものかで区別するほうが有意なことがあります。