ウエストローで紹介されていた事例です(広島高裁平成30年6月22日決定)。

 

 

本件は,約1年2か月の間に,①飲酒運転(罰金となり免許取り消し 罰金の支払いのために消費者金融から借入),②無免許運転での追突(修理費用が発生 当て逃げ),さらに,③無免許かつ飲酒運転でブロック塀に当たって逃走したが逮捕され,執行猶予付きの有罪判決を受けたという破産者が,職を失う生活保護となり,破産免責を申し立てたところ,2回目の事故で修理費用が未払いとなっていた債権者から免責不許可とすべきとの意見が出され,原審の破産裁判所は,免責不許可事由(破産法252条1項1号,4号)に該当するとして免責不許可にしたのに対し,高裁が,免責不許可事由には当たらず免責許可としたという事案です。

 

 

(免責許可の決定の要件等)
破産法第252条1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
四 浪費又は 博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

 

 

破産裁判所の判断としては,交通事故自体は過失であるとしても,飲酒運転自体は故意であり,債務が膨らんで返済できなくなってきているという状況の下で罰金を支払うための借入をしたり,さらに故意に飲酒運転した結果,ブロック塀に衝突して破産者の財産である自動車を壊したりしたことは,1号の免責不許可事由に該当すると判断しました。また,罰金の支払いや自車や追悼した債権者の自動車の修理費用については「浪費」(4号)に当たると判断しました。

平たく言えば,飲酒運転という馬鹿なことをしたから払わなくてもいい罰金を払ったり修理代金の負担をしたり自分の車の価値を減少させるような羽目になったのだから,免責不許可だということですね。

 

 

うーん・・飲酒運転や無免許運転,当て逃げという事情は非常に悪いとは思うのですが,免責不許可事由に該当するかどうかという点で破産裁判所が示した理屈というのは苦しいような気がしますが,やはりというべきか,抗告を受けた高裁では,事故を起こしたことについて「債権者を害する目的」があったとはいえないしとて1号の該当性を否定し,また,罰金の支払いはもちろん破産者が月1万5000円程度のキャパクラなどで飲食していたとしても浪費とまではいえないとして4号該当性も否定し,免責不許可事由がない以上は免責を許可しなければならないとされていることから,本件の破産者の免責を許可としました。