判例時報2369号で紹介された事例です(大阪地裁平成29年9月29日)。
本件は,建設機械等をレンタルしていた申立人が,相手方に対して,レンタル料の支払いを求めて民事調停を申し立てたというありふれた事案ですが,申立を受理した裁判所には管轄がないとして相手方が抗告したという事案です。
相手方の主張としては,レンタル基本契約書には「この契約について訴訟の必要が生じたときは●●地方裁判所又は〇〇簡易裁判所を管轄裁判所とすることに合意します」という記載はありましたが,調停についての記載はなかったのに,〇〇簡裁になされた調停申立ては不当であり,民事調停法3条1項の原則通り,相手方の本店所在地を管轄する簡易裁判所で調停がなされるべきであるというものでした。
(管轄)民事調停法第3条 調停事件は、特別の定めがある場合を除いて、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定める地方裁判所若しくは簡易裁判所の管轄とする。
裁判所は,契約書に「訴訟」と書かれてある以上,調停については,原則通り,相手方の出頭の便宜を図るという趣旨から定められた相手方の住所地を管轄する簡易裁判所が管轄裁判所であるとして,相手方の主張を認めています。
なお,決定において,付言として,申立人代理人も相手方代理人も「訴訟」用の委任状を使用しているが,「調停」についての手続き委任状を使用しなければ委任についての適法性について疑義が生じる余地があると注意喚起しています。
従来は,調停であろうがなんであろうが,「訴訟委任状」を使ってやっていたところもありますが,非訟事件手続法の改正や家事事件手続法の成立により,「訴訟」ではない,調停を含む非訟事件や家事事件については手続代理という概念が導入されたことから,この辺りの使い分けについても裁判所からきちんと指摘されることが増えるようになっていると思います。