株式会社の機関の設置態様は会社の規模等によってさまざまなバリエーションがありますが,監査役・監査役会についてもその一つです。
株式会社は定款の定めにより監査役又は監査役会を置くことができるとされ(会社法326条2項),あくまでもその設置は会社の任意の選択によるものとされているのが原則です。
(株主総会以外の機関の設置)会社法第326条2項 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。
但し,取締役会を設置している株式会社は,原則として監査役を設置しなければならないとされています(会社法327条2項)。取締役会を設置している場合,業務執行を取締役会が担うことになり,株主総会の権限が制約されることなどから,株主に変わって監査役が取締役の監視に当たるべきであるという考え方に基づきます。
会社法第327条2項 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。
もっとも,取締役会設置会社であっても,監査等委員会設置会社,指名委員会等設置会社については充実した取締役の監視機関があることから監査役の設置は必要とされません(会社法327条2項( )内で除外されている)。
また,同様に取締役会が設置されていても,公開会社ではない株式会社は,いわゆるオーナー株主による取締役の監視が可能な場合が多いと言えます。
そこで,公開会社ではない場合には,会計参与設置会社であれば監査役を設置する必要はなく(会社法327条2項但書),また,監査役の監査の権限を会計に関することに限定することも可能です(会社法389条1項)。
(定款の定めによる監査範囲の限定)会社法第389条1項 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
会計監査人設置会社は,監査役を設置すべき義務があります(会社法327条3項)。会計監査人による会計監査を機能させるためには取締役から会計監査人が独立して職務を行うことが必要となり,そのためには,監査役による監査が必要であると考えられたためであるとされています。そのため,会計監査人設置会社は,非公開会社であっても監査役の権限を会計監査に限定することはできないとされます(会社法389条1項)。
なお,大会社(会社法2条6号)は必ず会計監査人設置会社であるため(会社法328条),監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でない限りは,必然的に監査役を設置しなければならないということになります。
会社法第327条3項 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
(大会社における監査役会等の設置義務)会社法第328条 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
大会社であり,かつ公開会社である場合には,監査役ではなく,監査役会を設置しなければなりません(会社法328条1項 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除く)。
なお,会社法制定以前は,商法特例法上の大会社に監査役会設置義務がありましたが,会社法により,全株式が譲渡制限のある株式会社については監査役会の設置義務まではなくなっています(会社法328条2項)。