下請代金支払遅延等防止法(下請法)という法律があり,いわゆる元請けによる「下請いじめ」を防止するための法律で,マイナーな法律ですが,下請業者から相談を受けた際には知っておくと便利な法律です。
なぜかというと,この法律の適用があると,元請業者(下請法では「親事業者」といっています。)に対して,不当な受領拒否による代金の支払拒絶や,支払い遅延の禁止,下請代金の減額の禁止といった禁止事項が定められているほか(下請法4条),遅延利息について民法の定めよりも有利な遅延利息が適用される(下請法4条の2 現在のところ年14.6パーセント),また,行政指導がされ得るなど,下請業者に有利になるからです。
下請法の適用範囲については,委託する業務と資本金額の2つの基準により判断されることになっています。なお,勘違いしている人がいるのですが,下請法は,あくまでも元請と下請の関係を規律する法律ですから,(元請でもない)発注者と請負事業者の間で適用されるものではありません(発注者による理不尽な請負事業者に対する要求というのもありますが,下請法の適用ではなく独禁法の優越的地位に基づく不当な要求などの適用の余地はあります)。
下請法の適用となる委託業務は
①製造委託
②修理委託
③情報成果物作成委託
④役務提供委託
の4種類です。
①②は,物品の製造委託,その修理の委託を言いますが,ここでいう物品は動産を意味しています。家屋などの建築物については含まれません。建設業においても元請,下請という関係が頻繁に発生しますが,建設業においては下請法の適用はなく(下請法2条4項),実質的に同様なことを規定している建設業法の適用対象となります。
下請法の適用がある親事業者・下請事業者の関係となるには,上記のの委託業務について,両者が下記の資本金規模に当てはまっていることが必要になります。情報成果物物業務と役務提供委託業務のほうが両者間の規模が小さくても下請法の適用関係が成立しやすいということが言えます。
①②・・・親事業者の資本金が3億円超で,下請事業者が個人又は資本金3億円以下
又は
親事業者の資本金規模が1000万円超3億円以下で,下請事業者が個人又は資本金1000万円以下
③④・・・親事業者の資本金規模が5000万円超で,下請事業者が個人又は5000万円以下
又は
親事業者の資本金規模が1000万円超5000万円以下で,下請事業者が個人又は資本金1000万円以下