お金の貸し借りや損害賠償といった一般の民事訴訟については,訴えた原告がその請求に理由がないことを認めたり(請求の放棄),訴えられた被告が請求に理由があることを認めること(請求の認諾)は,当事者の自由な処分に委ねられるべき事柄として,自由に認められています(民訴法266条)。

 

 

しかし,人の身分にかかわる人事訴訟については,身分関係の形成は公益性が高い事柄であることから,当事者の自由処分に委ねることは妥当ではないので(例えば認知請求につい請求の放棄,認諾を認めると,本来認められるべき,認められるべきではない親子関係が認められなかったり認められたりして不当である),原則として,請求の放棄,認諾はすることができないとされます(人事訴訟法19条1項)。

 

 

 
(民事訴訟法の規定の適用除外)
人事訴訟法第19条2項 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条及び第二百六十七条の規定は、適用しない。

 

しかし,離婚と養子縁組の離縁についてはそもそも当事者が訴訟によらずに協議により自由に離婚・離縁することが認められているので,訴訟においても自由に処分することは可能であると考えられることから,請求の放棄,請求の認諾が認められています(人訴法37条1項,44条)。

 

 

人事訴訟第37条1項 離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわらず、民事訴訟法第二百六十六条(第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)及び第二百六十七条の規定を適用する。ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。

 

 

人事訴訟法第44条 第三十七条(第一項ただし書を除く。)の規定は、離縁の訴えに係る訴訟における和解(これにより離縁がされるものに限る。)並びに請求の放棄及び認諾について準用する。

 

請求の放棄と認諾では少し異なる部分もあって,例えば,請求の放棄の場合はその旨の書面を提出していた場合には口頭弁論期日に出頭しない場合であっても裁判所は請求の放棄の陳述をしたとみなすことができますが(人訴法37条1項,民訴法266条2項),請求の認諾の場合はそのまま身分関係の変更が形成されてしまうことからより一層当事者の意思確認が必要であることから,このような方法は認められていません。

また,親権者の指定が必要であったり,財産分与や養育費などの附帯処分が併せて求められている場合には,請求の放棄は可能ですが,離婚の認諾はすることができません(人訴法37条1項但書)。親権者の指定も附帯処分も協議によって決められるものなので当事者の自由な処分に委ねてもよさそうですが,裁判所に係属した以上は未成年者の福祉という観点から家庭裁判所の後見的な関与により判断されるべきであるという点,附帯処分についても本質的には訴訟事項ではなく審判事項であって請求の認諾になじまないという点から,これらの点についても判断が求められている場合には離婚請求の認諾自体が否定されているものです。

 

 

なお,請求を認諾する場合,理屈上は代理人によってもすることができると考えられますが,身分事項であるという点から本人の出頭が求められるという運用がされています。