民法728条2項では,一方配偶者が死亡した後,生存配偶者は,意思表示をすることにより,死亡配偶者側との姻族関係を終了させることができるものとしています。具体的には,役所に姻族関係終了届を提出することにより行います。期間的制限はなく,配偶者が死亡した後,いつでも行うことができます。

なお,死亡配偶者の姻族側からは姻族関係の終了をさせることはできず,片手落ちではないかという指摘もあるところです。

 

 

(離婚等による姻族関係の終了)
民法第728条2項 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。

 

 

姻族関係を終了させた後,死亡配偶者の祭祀承継をどのように考えるかという問題があります。

 

 

民法751条では,姻族関係終了となった場合の祭祀承継について,民法769条を準用しているとしていますが,これによると,祭祀承継をした生存配偶者が,姻族関係を終了させた場合は,祭祀の権利承継に関して関係人の協議により定めなければならないとし,協議が整わないときは家庭裁判所がこれを定めるものとされています。

 

 

(生存配偶者の復氏等)
民法第751条2項 第七百六十九条の規定は、前項及び第七百二十八条第二項の場合について準用する。
 
(離婚による復氏の際の権利の承継)
民法第769条 婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第八百九十七条第一項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。
 

 

 

裁判所で争われた事例としては次のようなものがあります。

・夫がゴルフプレー中に死亡し,残された妻が喪主を務めて葬儀を執行し,その後の法事についても執り行っていたが,義母が長女のもとに身を寄せるなど同居していた義母との折り合いが悪くなり,姻族関係終了の届出を行い妻と夫側との姻族関係が終了した。

・夫の遺骨は夫側の菩提寺に納められ,夫の位牌は夫の先祖の位牌と合わせて,妻が購入した仏壇に納められていた。

・妻は夫のみの祭祀を行っていきたいと希望し,夫以外の位牌は夫の親族に引き渡した。

・夫の遺骨が納められているお墓から夫の遺骨のみを取り出して新たにお墓を建てて祭祀を行っていきたいとし,夫についての祭祀承継者の地位確認,遺骨の取り出すことを認めるよう求める訴訟を提起した。

 

 

 

本事例で,裁判所は,妻の訴えを認めました(東京高裁昭和62年10月8日判決)。

婚姻夫婦の一方がなくなった後,生存配偶者が死亡配偶者の祭祀を執り行い,子があればその子がこれを承継していくということは,法的に承認されるしかるべきであるとしています。家制度を中心とした考え方では,その家に属する者の祭祀はその家で執り行うということになるところ,二男,三男が婚姻して家を離れれば,婚姻した配偶者が祭祀を行っていくという我が国の最近の慣習に照らしてもこのようなに考えるべきだとしています。

 

 

祭祀ということばの語感からすると,連綿と続く祖先も含めた祭祀ということをイメージし,連続性の中から一人だけを取り出して祭祀の対象とするということをどのように考えるかということになりますが,夫婦を一つの原始的な家族の単位とするという現行民法の考え方からすると,このように考えることが自然であるということができるかと思います。