http://www.yomiuri.co.jp/national/20180502-OYT1T50004.html
東京都が先月発表した受動喫煙対策を強化する条例案骨子には、国の法案よりも厳しい規制が盛り込まれた。
都は2020年東京五輪・パラリンピックの開催都市として「五輪水準に近づいた」とする。ただし、飲食業界からは反発、区市町村からは困惑の声が上がり、実効性の担保などの課題も残っている。
(5月2日読売新聞オンラインから一部引用)
国の法令により定められた基準よりも厳しい基準を定めた条例で規制すること(上乗せ条例)が許されるのかという憲法上の問題があります。
憲法94条では,条例は法令の範囲内で定めることができるとされ,法令(法律のみならず政令も含む)よりも下位の法規範であるとされているからです。
憲法第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。
法令と条例がどのような場合に矛盾抵触するのかという基準を示した判例として著名なものに,デモの際にジクザク行進したことから道交法と条例の双方に違反するとして刑事責任を問われた被告人が道交法よりも厳しい規制基準を定めた条例は違憲であるとして争った徳島市公安条例事件があります。
最高裁は「両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによつてこれを決しなければならない。例えば、ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうるし、逆に、特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときや、両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾抵触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない」と判示しています(最高裁昭和50年9月10日判決)。
法律と条例の規制目的が異なっていたり,目的が同じでも法令の趣旨が全国一律の規制を定めたものではなく,最低基準(ミニマムスタンダード)を定めたものであると認められる場合には,法令と条例の間に矛盾抵触は生じないとし,当該事案においては,道交法の定め自体が各地の公安委員会による裁量判断を認めており全国一律の規制をしたものではないから条例で別途基準を定めて規制することも許されるとしました。
他方,普通河川の管理について,河川法の規定以上の強力な規制を施すことを認めていない趣旨と解される河川法の趣旨に鑑みて条例を法令に反するものと判断した高知市普通河川等管理条例違反事件というものもあります(最高裁昭和53年12月21日判決)。
法令の定め方にもよりますが,都の受動喫煙防止条例について,罰則を定めた場合には刑事事件において,営業許可に関する係争にあっては行政事件として,法令よりも厳しい基準を科すことについての合憲性が争われることもあるのだろうと思います。