判例時報2360号で紹介された最高裁の決定です(平成29年9月5日)。
民事訴訟法上,訴訟上の救助という制度があり,この制度の適用が認められると,印紙代や郵券など(郵券まではなかなか認めてくれないことも多いですが),裁判所に納めなければならない費用の納付を猶予してもらえることになっています。
誤解している人もいますが,費用はあくまでも猶予してもらえるのであって,納めなくてもよいというわけではありません。
ただ,訴訟救助してもらった側が全面勝訴し,相手方がすべての費用負担をすることとなった場合,理屈上は,訴訟救助を受けた側(非救助者)が裁判所に猶予してもらった費用を納付してから,相手方からこれを取り立てるということになりますが,必ずしもこのようなことが期待できないし迂遠であることから,民訴法85条により,国が,直接,相手方から取り立てることができるものとされています。
(猶予された費用等の取立方法)民事訴訟法第85条 訴訟上の救助の決定を受けた者に支払を猶予した費用は、これを負担することとされた相手方から直接に取り立てることができる。この場合において、弁護士又は執行官は、報酬又は手数料及び費用について、訴訟上の救助の決定を受けた者に代わり、第七十一条第一項、第七十二条又は第七十三条第一項の申立て及び強制執行をすることができる。
本件は,Aが8万6000円の費用を納付して提起した訴訟に対し(後にAが死亡しCらが訴訟承継した),Bが訴訟上の救助決定を得て11万9000円の支払いを猶予され,さらに,控訴審でも訴訟救助の決定を得て17万8500円の控訴費用の支払の猶予をしてもらっていたところ,控訴審において,訴訟費用について第一審・二審を通じてBの費用の5分の3とCらに生じた費用の合計の2分の1をBの負担とすると定められました。
Bは合計29万7500円の費用の支払いを猶予されていたところ,裁判所(原審高裁)は,このうちCらが負担すべき金額として,29万7500円×5分の3×2分の1=8万9250円を取り立てることとして決定しました。
しかし,Cらからすると,もともとAが納付していた8万6000円について一部はBが負担すべきものであって,これを考慮せずに単純にBが猶予された金額についてのみCらの負担金額を定めたのは違法であるとして最高裁に許可抗告を申し立てたというのが本件です。
最高裁ではCらの許可抗告認めて審理を差し戻しとしました。
訴訟費用については訴訟費用確定処分という手続きにおいて定め4る場合には,双方当事者から計算書を提出させて差し引き計算して負担額を定めるというのが手続きの在り方であるところ(差引き計算してもらうかどうか,どの範囲で差し引き計算してもらうかについて当事者の意思に委ねられている),本件のように,猶予された訴訟費用の負担金額を定める場合には,裁判所が主体となって行うことになるので,相手方が負担した金額を考慮するかどうかも含めて裁量に委ねられているとはいえるものの,本件において,C側では高裁に抗告した際に亡Aが負担した費用の差し引き計算を求めており,このような場合にはCらに対して差し引き計算を求める範囲を明らかにしてもらうなどを求めるべきであってこのような措置を取らずにCらの負担額を決めたことは違法があると判断したものです。