http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171118/k10011227931000.html?utm_int=news-social_contents_list-items_021

 

 

 

 

低血糖の症状で意識がもうろうとするおそれがある状態だったのに車を運転し、路上で交通整理をしていた男性をはねて死亡させたとして、警視庁は51歳の男を危険運転致死の疑いで逮捕しました。

容疑者は20年ほど前から糖尿病を患っていて、この日も昼食の前にインスリンを投与していたということです。その影響で低血糖症になったと見られ、事故当時、意識がもうろうとしていたということです。
調べに対し、容疑を認めたうえで「これまでも意識がもうろうとすることがあった」と供述しているということで、警視庁は正常な運転ができないおそれがあることを自覚していたと見て調べています。

(11月18日NHKニュースウェブから一部引用)

 

 

糖尿病とその予備軍が国民のかなりの割合を占めてきているという現状の中、このような事故というのはこれからますます増えていくものと予想されます。また、糖尿病に限らず、心筋梗塞や認知症といった病気を原因とする交通事故も増加していくものと考えられるところです。

 

 

 

このような事故が起こった場合の刑事責任の有無における問題の一つとしては、被疑者(被告人)の責任能力が問題となります。意識を失っている時点ではその責任を問うことはできませんから、意識があった時点にさかのぼって、何らかの注意義務違反が認められないかどうかを検討するということになりますが、一般的には、運転を開始した時点において、病気による意識障害が起こるという可能性を認識予見し、これを回避すべき注意義務を怠ったかどうかということが問題とされ、特に、病気による意識障害が問題となるケースにおいては、そのような認識予見が可能であったかどうかということが問題となります。

 

 

普段の生活において特に病気の前兆もなく、運転中に突然変調をきたして事故につながったような場合には、運転者にそのような認識予見が可能であったとまでは言えず刑事責任を問うことは困難であるということになりますが、糖尿病と診断され、血糖値管理等を行っていたという場合には、それまでにも運転に支障をきたすような前兆を感じていたことがあったか、運転開始時に適切な管理を行っていたかといったことを検討することにより、糖尿病による意識障害を認識予見することが可能であったといえるケースも多いのではないかと思われます。

 

 

 

裁判例でも糖尿病による意識障害を原因とする交通事故の事案というのはそれなりにあり、被告人の糖尿病が無自覚性のものであり運転開始時には低血糖症の前兆を感じていなかったという認定にも関わらず被告人に低血糖症による意識障害の認識可能性を予見すべき義務を怠ったと判断した一審判決について、そのような前提の下では認識可能性を予見すべき義務があったとは言えないと判断した事例があります(大阪高裁平成29年3月16日 もっとも、一審判決が前提とする事実自体について不合理であるとして審理について差し戻しとされています)。