https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23252340Y7A101C1CN8000/

 

 

桑名市によると、市は昨年9月、虐待された疑いがあるとして女性を保護。市の申し立てを受け、家裁が後見を決めた。

 その後、家族が名古屋高裁に即時抗告。高裁は1月10日、女性との対話が一応成立している上、診断書などから「高度の認知症とまでは言えず、鑑定が不要とは認められない」と判断した。

 高裁決定後の鑑定で、女性の認知症は軽度と診断された。判断能力に応じ後見、保佐、補助の3段階があるが、補助が相当とされた。市は改めて女性に補助人を付けるよう家裁に申し立てたが、女性が拒否したため、取り下げたという。

(11月8日日経新聞オンラインから一部引用)

 

家事事件手続法により,後見,保佐については原則として鑑定を必要とし,例外的に明らかにその必要がないときは鑑定は不要とされています,補助については鑑定は不要で,ただ,医師の意見(診断)を必要としています。

 

家事事件手続法第119条 家庭裁判所は、成年被後見人となるべき者の精神の状況につき鑑定をしなければ、後見開始の審判をすることができない。ただし、明らかにその必要がないと認めるときは、この限りでない。
 
 
第133条 第百十九条の規定は被保佐人となるべき者及び被保佐人の精神の状況に関する鑑定及び意見の聴取について、第百二十一条の規定は保佐開始の申立ての取下げ及び保佐人の選任の申立ての取下げについて、第百二十四条の規定は保佐の事務の監督について準用する
 
第138条 家庭裁判所は、被補助人となるべき者の精神の状況につき医師その他適当な者の意見を聴かなければ、補助開始の審判をすることができない。

 

 

実務上,少なくとも東京家裁においては,診断書の記載において長谷川式検査で10点未満で,その他の病状などの記載から後見相当であるとされているような場合には,鑑定は省略されていますが,後見相当としてチェックが付いていたとしても,長谷川式の点数が高かったりする場合には,鑑定が実施される扱いであるのが通常の運用ではないかと思います。また,記事にあるように,家族,親族からの反対が予想されるような場合にも,診断書の記載から明らかに後見相当であるという場合を除けば,家族等の反対は鑑定を実施する方向の要素として考慮されるものと思います。

 

 

 

記事にあるケースの場合,どうやら,診断書上,後見相当とはなっていたとしても検査結果として釣り合っていなかったようであり,鑑定を実施するべきであった事案であったことが窺われます。

 

 

 

その後,補助人を付けるように申し立てられたが本人が拒否したため申立が却下されたとのことですが,これは補助については本人の同意が開始要件となっているためです。

 

 

申し立てた市の対応が杜撰だったと非難することもできますが,虐待が疑われるケースであったということも踏まえると困難ケースであり,なかなか判断は難しいところです。