判例時報2336号で紹介された事例です(静岡地裁平成28年5月13日)。

 

 

本件は県立高校の硬式野球部のハーフバッティング(投手と打者の距離が公式のものよりも短い 速球に強くなるため)の打撃投手を務めていた部員に打球が直撃したという事案で,部員側が高校の設置者である県に対して損害賠償を求めたというものです。

 

 

本件で,打撃投手の場所にはL字ネットと呼ばれる防護柵は設置されていましたが,本件野球部も加盟する高野連が,打撃練習時において義務付けていた一定品質の投手用ヘッドギアの着用について,本件野球部の顧問・監督の教諭は練習に立ち会っていたのにむ,着用を指示していませんでした。

このことから,裁判所は,当該教諭は部活動において生徒の安全を配慮すべき注意義務に違反したと認定しました。

 

 

当該部員は,打球が頭部に直撃したことから,頭がい骨骨折をするなどし,治療後もてんかんが発生しやすいとされる脳波が残るなどしたことから,裁判所は後遺障害として14級9号(局部に神経症状を残すもの)を認定したうえで,15歳にして将来の夢であったプロ野球選手に挑戦する機会を奪われたなどとして,その慰謝料して300万円を認めました。通常,交通事故などで後遺症14級9号の後遺症慰謝料としては110万円程度ですので,破格ということはできると思います。