自分が先に死んだ後の配偶者のために遺言を書いておきたいという相談は昔からよくあるものです。

 

 

単に「遺産はすべて配偶者に相続させる」とするのが一番単純な方法であり,実際によく行われていることです。

 

 

ただ,この方法によった場合には問題が発生することもあります。

 

 

ひとつの問題として,遺産が配偶者に相続されるまでは良いとしても,その配偶者が死亡した場合,その遺産が配偶者側の親族に渡ってしまうことがあり得るということです。

 

 

例えば,子供のいない高齢夫婦において,夫側にも妻側にも兄弟姉妹や甥姪がいるという場合,夫が「遺産はすべて妻に相続させる」という遺言をすると,夫の遺産はすべて妻が相続することになります。

妻が亡くなった場合,夫から相続した遺産はあくまでも妻の遺産となりますので,妻の兄弟姉妹や甥姪が相続するということになります。妻が「自分の死後は夫側の兄弟姉妹や甥姪に相続させる。」という遺言を書いておくのも一つの方法ですが,認知症などで妻がすでにそのような遺言を書けるような状態ではないということもよくあることです。

 

 

 

このようなケースでは,夫が「遺産を信託財産として妻を受益者とする」という遺言信託をしておくことが考えられます。受託者としては,妻が亡くなった後にやがて遺産を渡したいと考えている甥や姪を指定しておき,妻が亡くなった後の残余財産は甥や姪に分け与えるということにしておけば,妻のために遺産を使ったうえで,残った遺産は自分の血縁に対して残したいという願いも両立してかなえられる,ということになります。