後見人等(保佐人・補助人を含みます)や監督人に対しては,家庭裁判所が被後見人等の財産の中から報酬を付与する旨の審判を行い,それに従って,後見人等は報酬を得ることができます。
実務上は年に1回の定期の報告時期に合わせて報酬付与の審判申立てを行っているところです。
後見人等の報酬の額については一定の目安がありますが,後見人等としては大変な事案を処理したのに存外に報酬額が低いと感じることがある一方で,本人や親族にとっては「高すぎる。」と思うことも多く裁判所にクレームを入れることもあるなど,当事者にとっては切実な問題となっているところです。
家事事件における家庭裁判所の審判に不服がある場合には即時抗告をすることができますが,すべての審判に対して即時抗告ができるわけではなく,特別の定めがある場合に限るとされており,後見事件において報酬決定の審判は即時抗告ができるものとして定められていません。
(即時抗告)第123条 次の各号に掲げる審判に対しては、当該各号に定める者(第一号にあっては、申立人を除く。)は、即時抗告をすることができる。一 後見開始の審判 民法第七条 及び任意後見契約法第十条第二項に規定する者二 後見開始の申立てを却下する審判 申立人三 後見開始の審判の取消しの申立てを却下する審判 民法第十条 に規定する者四 成年後見人の解任の審判 成年後見人五 成年後見人の解任の申立てを却下する審判 申立人、成年後見監督人並びに成年被後見人及びその親族六 成年後見監督人の解任の審判 成年後見監督人七 成年後見監督人の解任の申立てを却下する審判 申立人並びに成年被後見人及びその親族八 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の審判 成年被後見人及びその親族九 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託の取消し又は変更の審判 成年後見人十 成年被後見人に宛てた郵便物等の配達の嘱託及びその嘱託の取消し又は変更の申立てを却下する審判 申立人十一 成年被後見人の死亡後の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為についての許可の申立てを却下する審判 申立人
それではあんまりだということで何か規定がないか探すと,審判の取消,変更という制度があります。
(審判の取消し又は変更)第78条 家庭裁判所は、審判をした後、その審判を不当と認めるときは、次に掲げる審判を除き、職権で、これを取り消し、又は変更することができる。一 申立てによってのみ審判をすべき場合において申立てを却下した審判二 即時抗告をすることができる審判2 審判が確定した日から五年を経過したときは、家庭裁判所は、前項の規定による取消し又は変更をすることができない。ただし、事情の変更によりその審判を不当と認めるに至ったときは、この限りでない。
あくまでも裁判所が職権で行うものにはなりますが,報酬について不服がある場合には,その事情を記載するなどして取消・変更を求めてみる,というのも一つの方法として考えられるところです。