養育費を取り決める際の条項としては,毎月の月額をその月の(例えば)月末までに支払うこと,養育費支払いの終期としては子どもが20歳に達する月まで(7月生まれであれば20歳の誕生日を迎える7月まで)というように取り決めるのが通常です。

 

 

公証役場での公正証書(強制執行認諾付)や裁判所の調停調書など強制執行可能な債務名義と呼ばれる文書を保持していれば相手方の資産収入に対して強制執行をかけることが可能になります。

 

 

養育費は毎月発生するもので,到来していない月の養育費については弁済期が到来していないということになりますが,相手方の給与などの継続的給付に係る債権を差し押さえる場合には,期限未到来の将来分の養育費も差し押さえてしまうことができます(民事執行法151条の2第1項3号,2項)。

 

 

1カ月でもその月の養育費を支払わなかった場合には,取り決められた終期の分の養育費まで全て,相手方の給料の中から支払うように差押することができるわけです。

私も,中学生くらいの子どもの養育費について,支払いを遅滞した相手方の給与を差し押さえてその子が20歳になるまで延々と職場から直接,給与の一部を私に送金してもらうことで養育費の支払いを管理したことがあります。

 

 

(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)
民事執行法第151条の2  債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、第三十条第一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。
 三  民法第七百六十六条(同法第七百四十九条 、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。

 

 

但し,上記は差し押さえる対象が継続的給付債権である場合のみであり,不動産などのそれ以外の対象資産については,期限未到来の分について差し押さえる(強制執行により競売して換価された代金の中から支払いを受ける)ということは認められていません(民事執行法30条1項)。

 

 

(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行)
民事執行法第30条  請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。

 

そうすると,相手方が給与などの収入がなく,不動産を持っているという場合に,期限が到来した未払分のものについてはたとえ債務名義を持っていたとして強制執行することはできないということになってしまいます。

 

 

そこで,弁済期未到来の将来分の養育費について,強制執行ではなく,仮差押えにより保全しておくということが考えられますが,裁判所の考えかたとしては,強制執行可能な債務名義を持っている債権者が保全をすることについては否定的なようです(最高裁平成29年1月31日 将来分の養育費についての不動産に対する仮差押えの申し立てを却下した判断を是認)。

酷なような気もしますが,裁判所の立場が子のようである以上,離婚に際して相手方にしっかりとした給与などの収入がなく,不動産があるという場合には,養育費相当の全額を被担保債権として抵当権を設定しておくなどの工夫が必要なようです。