成年後見人は本人の財産の中から家庭裁判所が決めた報酬を受け取ることができますが,報酬の決め方としては,基本報酬(東京家裁の場合概ね財産額が5000万円までの場合月2万円程度とされています)と付加報酬に分かれます。
付加報酬というのは,後見人が特別な業務を行い本人の資産の管理や増殖に寄与したと認められる場合にもらえるものです。
後見人の報酬は,親族であろうと弁護士のような専門職であろうと算定方法は変わらないとされていますが,一般的に専門職の方が報酬が高くなることが多いのは,専門職の方が専門職でなければできないような業務を担うことが多いためです。
弁護士でなければできない特別の業務としては,訴訟提起・追行というのが典型になります。
本人の資産が横領等により侵害された際に,後見人である弁護士が加害者に対し損害賠償請求する際,前記の特別な業務として付加報酬が支払われる可能性が高いということになりますが,本来であればそのような訴訟提起する必要はなく余計な付加報酬を支払わされたとして,加害者に対しその分についての損害賠償も請求することができるのでしょうか。
この点について,一つの裁判例(東京地裁平成28年3月29日)は,「成年後見人の報酬は家庭裁判所の審判により決定されるものであるが,当該報酬は成年被後見人の財産の中から支弁されるものであることや,親族である後見人が弁護士を訴訟代理人として選任して損害賠償請求訴訟を追行した場合には,弁護士費用相当額が損害として認められることの均衡を考えれば,本件訴訟における弁護士報酬相当額も被告の不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。そして,本件の経緯,難易度等,本件に現れた一切の事情を総合すれば,弁護士費用相当額は,被告の無断処分額と認定した金額の約1割に相当する1100万円と認めるのが相当である。」と判断しています。