破産事件をどの裁判所に申し立てるかという点(管轄)について,破産法に規定があり,原則として個人であれば住民票がある場所を管轄する地方裁判所,法人であれば本店登記がされている場所を管轄する地方裁判所になります。

 

 

破産法第5条 破産事件は、債務者が、営業者であるときはその主たる営業所の所在地、営業者で外国に主たる営業所を有するものであるときは日本におけるその主たる営業所の所在地、営業者でないとき又は営業者であっても営業所を有しないときはその普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
2 前項の規定による管轄裁判所がないときは、破産事件は、債務者の財産の所在地(債権については、裁判上の請求をすることができる地)を管轄する地方裁判所が管轄する。
3項以下 略
 
(普通裁判籍による管轄)
民事訴訟法第4条1項 略 
2 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
3 
4 法人その他の社団又は財団の普通裁判籍は、その主たる事務所又は営業所により、事務所又は営業所がないときは代表者その他の主たる業務担当者の住所により定まる。
5項以下 略

 

かつて,東京地裁破産部では,あまり管轄に拘らずに,特に個人については全国各地の人からの申立てを受理していましたが(私も,山陰地方に住所がある方の申立てをしたことがありました),平成27年5月からは,管轄について慎重に審査する方針であると表明がされています。これは,債務整理を多く取り扱う法律事務所が全国各地の申立人についての破産事件を東京地裁に大量に申し立てていることが問題視されたためといわれています。

 

 

東京近郊の埼玉,千葉,横浜辺りに住んでいる方であっても特別扱いはなく管轄が慎重に審査される方針のため,私のように債務整理事案を特別に多く扱っていない弁護士としても,気づいてみたら東京地裁に管轄がないかもしれないと慌てることもありそうです。

 

 

ただ,住民票が東京地裁管轄になかったとしても,経済上の本拠が東京都にあるという場合には東京地裁に管轄が認められることもあるとされており,勤務先や債権者の半数以上が東京都内に所在しているといった事情が考慮されるようです。

 

 

また,法人についても,少なくとも東京近県の場合にはこれまでそれほど管轄について細かく指摘されていなかったものですが,今後は,東京都内に本店が登記されていないのにも拘わらず東京地裁に申立てをした場合,実質的な本店や営業活動の本拠が東京都内にあるのかどうかといったことが審査されることになります。

法人の破産事件は急ぐことも多いので,申立したけれども管轄がないので別の裁判所に申立てをやり直しをせざるを得なくなったということになると,その間に破産財団が棄損されてしまい申立代理人弁護士の責任が問われるということも考えられますので,なおさら管轄について慎重に検討しなければならないものと思われます。