労基法90条1項は,就業規則の作成・変更について過半数組合又は過半数労働者の代表者の意見を聞かなければないないものと定めています。
就業規則を届け出る場合には,その意見を記載した書面を添付しなければなりません(同条2項)。
(作成の手続)労働基準法第90条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。○2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。
「労働者の過半数」とは,その事業場で働いているすべての労働者数の過半数を意味し,正社員だけではなく,パートタイマー,契約社員,臨時工,出向社員などが含まれます。但し,派遣社員は,雇用しているのは派遣元の派遣会社ですので,含まれません。
また,いわゆる管理監督者については,その事業場で働いているすべての労働者の意思を問うという趣旨から,過半数計算の母数には含まれると解され,ただ,代表者にはなれないものとされます。
代表者の選出方法について,選出目的を明らかにして民主的な手続きにより選出され,使用者の意向により選出されたものではないことが必要ですが(労基法規則6条の2第1項2号),具体的なは方法としては選挙のほか,挙手や持ち回り決議であっても許されます(通達)。
この点については,いい加減になされている例が多いところですが就業規則やその変更の有効性が問われた際には問題とされることもあります(社内の親睦団体の役員が信任の手続を経ずに自動的に過半数代表者となっていた取り扱いが無効とされた事例 トーコロ事件)。
なお,過半数代表者の任期について特に法で規定しているところではありませんが,1~2年間程度の任期を事前に定めて選出するということは許されるものと考えられます。
意見聴取は,意見を求めて参考にするという意味であり,同意を要するというところまでは要求されていません(仮に反対意見であればこれを記載した書面を添付して届け出るということになります)。
なお,パートタイマーや有期契約労働者については正社員とは別に就業規則が定められていることも多いですが,この場合であっても,当該事業場の過半数労働者の代表者の意見を元炉ればよいので,法的には,代表者が正社員であっても構いません。
ただ,短時間労働者雇用管理改善法7条1項において,そのような場合にはパートタイマーなどの短時間労働者の過半数代表者の意見を聴くことについて定められていますが,努力義務に留められています。
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(就業規則の作成の手続)第7条 事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められるものの意見を聴くように努めるものとする。
【就業規則の作成・届出義務】
https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12269725504.html