交通事故などの不法行為においては,過失相殺後の損害額の10パーセント程度が損害として認められることが一般的です(ただ,これは専門家である弁護士に依頼して訴訟追行する必要性があるという理屈から認められるものなので,訴訟の内容からして弁護士に頼む必要まではなかったとして弁護士費用相当額が認められないということも稀にですがあります。)。

 

 

ところで,弁護士費用特約といって,弁護士を依頼する費用を保険会社が負担する特約のついた保険に加入している場合には,弁護士費用(着手金・報酬など)が保険会社から支払われます。

 

 

この弁護士費用特約を利用した場合には利用した当事者は自腹を切っていないのではないかということで,弁護士費用相当額として前記の程度の賠償請求をしてよいかという問題があります。

 

 

この点については肯定する裁判例と否定する裁判例があり,肯定例としては「弁護士費用相当額の保険金は原告の負担した保険料の対価として支払われるものであるから,原告Xに弁護士費用相当額の損害が発生していないとはいえない」としたものがあります(東京地裁平成24年1月27日判決)。

否定例としては,さいたま地裁平成23年11月18日があります。

 

 

そもそも,当事者が弁護士費用特約を使ったかどうかということは,尋問などでその点について明確に述べられているのであれば別ですが,裁判所や相手方当事者には明確には分からないのですが,提出された当事者の保険契約の内容などから「弁護士費用特約を利用したことが窺われる」などとして特約の利用を認定している裁判例もあります。

 

 

特約を利用した場合にどうするかは悩ましいところもありますが,肯定する裁判例もある以上,とりあえず請求したとしても問題はないように思います。

 

 

なお,少し違った事例として,弁護士に依頼していないのに,その分に相当する労力や時間などを費やしたとして弁護士費用相当額を損害賠償請求できるかという問題もありますが,この点については,否定した裁判例があります(東京地裁平成14年9月9日判決)。