https://www.kobe-np.co.jp/news/jiken/201703/0010017042.shtml
逮捕容疑は19日午前1時ごろ、姫路市神子岡前1の路上に停車したタクシーの車内で、運転手の男性(66)の髪の毛をつかみ、先がとがった毛抜きを突きつけて現金を奪おうとした疑い。
同署によると、男は18日、同市内の更生保護施設を出て出身地の東北に帰るつもりだった。しかし、手持ちの現金が足りず、強盗を思い付き、明石市内からタクシーに乗車し、姫路方面へと向かった。支払いの際に「金を出せ」などと脅したが、運転手は「お金はない。こんなことはしないほうがいい」と突っぱねた。
その後、運転手は男を近くのファミリーレストランに連れて行き、飲食させた。朝まで話を聞き「仕事があるから帰るわ」と言って別れたという。男は午後2時半ごろ、姫路駅南の交番に自首した。
(3月20日神戸新聞ネクストから一部引用)
逮捕の被疑事実は強盗未遂ということになっていますが,強盗罪は「暴行又は脅迫」を用いることが要件となっており,その程度は被害者の「反抗を抑圧する」程度の強いもの,すなわち,被害者が反抗することができないくらいの強いものであることが必要とされ,この点で,被害者の犯行を抑圧しない程度の脅迫行為を加える「恐喝」と区別されるとされています。
(強盗)
記事によると,本件で犯行に用いられた凶器は「先のとがった毛抜き」ということですが,運転手と後部座席の客との位置関係からすると運転手が少しでも動いたら傷つけられるほどのものかといえばそうでもないように思われますし,また,なんといっても当の運転手自身が要求を突っぱねた挙句に近くのファミレスにまで連れて行って話を聞いているというのですから被害者である運転手が「反抗を抑圧」されていないといううことがいえそうで,送検される際には罪名としては恐喝未遂となっているということも考えられるところです。
裁判例においては,別れた元妻の家に金銭を奪う目的で押しかけて縛って骨折などをさせた行為を恐喝として判断したもの,荷物の配達を装って被害者の高齢女性の口を背後からふさいで玄関まで押し込みともども転倒したが強い抵抗にあった事案について恐喝未遂と判断したものなどがあります。