破産者が破産手続き開始前に、離婚に際しての財産分与や慰謝料として不動産や高額な金員を給付している場合に、破産管財人が否認権を行使することができるかどうかについては、同様の規定である債権者取消権について定めた民法424条2項は「財産権を目的としない行為」については取消の対象としないこととしています。
(詐害行為取消権)民法第424条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした法律行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者又は転得者がその行為又は転得の時において債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでない。2 前項の規定は、財産権を目的としない法律行為については、適用しない。
離婚自体は身分行為であるとしても、それに伴う財産分与つについては財産の処分行為としての性格を持つものとであることから、慰謝料的要素を含めた財産分与として不相当に過大であり、財産分与に仮託してなされた財産処分であると認められる場合には、債権者取消権の対象となるものとされており(最高裁平成12年3月9日判決)、破産管財人による否認権の行使についても同様に解されています。
なお、取消、否認の対象となるのは。財産分与全体ではなく、不相当に過大である部分についてのみです。
また、離婚に際しての慰謝料の支払いの合意については、離婚によってすでに発生していた損害を賠償するものであり新たな債務を負担する行為ではないとして,原則として詐害行為取消(否認)の対象にはならないが,慰謝料についても負担すべき損害賠償債務の額を超えた部分については,慰謝料支払いの名に借りた金銭の贈与契約ないしは対価を欠いた新たな債務負担行為として詐害行為取消(否認)の対象となるものと解されています(詐害行為取消についての前記判例)。