判例時報2271号で紹介された事例です(東京高裁平成26年5月21日決定)。



本件は,被相続人の父方の従兄Aが,被相続人の特別縁故者に該当するとして遺産の分与を求めたところ,東京家裁が特別縁故者に当たるとしたもののその金額が300万円であったことから,金額を不服として抗告したというものです。特別縁故者というのは,相続人や遺言による受遺者もいない場合に,家裁が認めた場合に遺産から分与を受け取ることができるというものです。



本件の従兄Aというのは,被相続人の父の妹の子どもという関係でしたが,被相続人と父の関係が悪化し,母も亡くなったことから,平成13年ころからはAと被相続人の意思の疎通も困難となったものの(関係が悪かった父に関係する親族ということが原因なのでしょうか,理由はよく分りません),それでも,その後被相続人の父が死亡した際には親族への連絡や葬儀等の手配を行ったり,その後は時折訪問しては被相続人を訪問して安否確認をしたり,民生委員や近所の家に緊急連絡先として自分の連絡先を伝えたりするなどしており,被相続人の自宅からゴキブリが大量に発生しているという苦情が出た際には害虫駆除作業を行う,消防などからの連絡を受けて車庫の修理等を行うなど,Aと被相続人との間にはそれなりの交流があったとされています。



平成23年に被相続人が死亡しているのを発見したのもAで,近隣住民からの通報を受けて警察官と一緒に自宅に入り被相続人が死亡しているのを見つけて,その後遺体の引き取りは葬儀の執行等を行ったということです。




上記のような経緯から,家裁ではAを特別縁故者としては認めたものの,分与額としては300万円でした。




抗告を受けた高裁でも,Aを特別縁故者としては認めたものの,その算定に当たっては,縁故関係の濃淡,程度や期間,相続財産の種類や数額その他一切の事情を考慮するべきものとしたうえで,本件においては,Aと被相続人のかかわりは,被相続人の父が死亡してからの5年の間に,年にせいぜい1~2回程度であり,頻繁に訪れて物理的にも精神的にも面倒を見ていたとまではいえないこと,Aと被相続人の関係が必ずしも円滑な親族関係であったとまではいえないことなどから,300万円という分与額も相当であるとされました。



なお,本件の遺産総額は約3億7875万円です。



この遺産はどうなってしまうかというと,相続人も受遺者もいないわけですから,Aに対する分与の支払いとその他必要な債務の支払い,相続財産管理人の報酬を支払った残額は国庫へ納められるということになります。




「どうせお国に取られるのなら・・・」ということでAがもっと分与してほしいと思うのも無理はありませんが,この辺りはなかかなシビアです。



なお,相続財産管理人の報酬についても同様で,私も同程度の遺産総額の件で
「相続人も債権者もいないのだし・・・」と淡い期待を抱いたこともありましたが,結果は似たようなものでした(笑





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